跡部に、「少し返事を待って欲しい」と言って私は侑士の家に向かった。
婚約者とか、家のこととか、跡部は全部説得して私を受け入れてくれると言った。跡部なら何でも可能にしてしまうんだと思う。でも私は迷っていた。
私が好きなのは…誰?
「跡部に聞いたで。1番の女にしてもらえるんやって?」
侑士は悲しそうにそう言った。
侑士は、私の事を好きなのだろうか。あんな写真撮って学校に公表して私と付き合ったわけだけど…私にはそれがどうしても分からなかった。
「アイツ、名前と別れろって言うてた」
「…」
「名前、知ってたんか」
「…うん。」
侑士の顔を見たら心が痛くなった。跡部の事は今も好き。でも今、私が一緒に居たいのは…
私は侑士を抱きしめた。寂しそうで悲しそうなこの人を報っておけなかったから。あと、もう一つ理由がある。
侑士は拒否する事もなく私の手に自分の手を重ねた。
「俺は跡部に何も勝てんから…」
「うん」
「そのためにお前を利用した」
「うん…」
「分かってたんやろ?ならこの手、離さなアカンよ。」
私の手を解こうとした侑士。でも私は彼を離す事なんて出来なかった。今一緒に居たいと思えるのは…この人だから。
「私は高級なスイーツよりコンビニで買えるアイスの方が好きだよ」
「何やそれ」
「つまり跡部が高級スイーツで侑士はコンビニのアイスってこと」
後ろから侑士の頬っぺたにキスをしたら、侑士が振り返って私の唇にキスしてくれた。
「アホ。分かりにくいっちゅーねん。しかもコンビニのアイスって失礼やな」
「へへへ。前に一緒にアイス食べたから分かってくれるかなーって思って。あ、でも侑士はハーゲンダッツだから。なかなか高級でしょ?」
「…ったく、何なんお前は」
侑士がそう言いながら私を抱きしめてくれた。跡部の時もときめいちゃったけど、侑士の時の方が安心する気がした。
「俺も…ずっと一緒に居りたい。好きや…名前。」
私、やっと1番になれたよ。
20110917
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