名前が俺の女になったっちゅー事はすぐに学校中に広まった。跡部の耳にも届いたかと思うと楽しくて楽しくてしゃーないわ。
「おい忍足」
案の定部活の時間に話し掛けてきよった。跡部には悪い事したけど、これぐらいしか俺は跡部に勝つ方法が無かったんやで。俺は何も、お前には勝てんから…。
「あいつ…苗字と付き合ったんだってな?」
「せやで。向こうから告ってきてん」
なんて、嘘やけど。まあ跡部にバレる事なんてないんやからこれくらい嘘ついたってええやろ。
跡部は跡部で少しだけ不機嫌な様子やった。完全に俺の術中にハマってるやん。
「あの女は俺に縋ってくるかと思ったんだがな…やっぱりただの阿婆擦れ女だったか」
「何や跡部、あいつに未練あるんか?」
「そんなんじゃねえ。ただ俺のプライドに傷をつけた事は間違いない」
今まで跡部に振られた女は泣いて縋ってたからなあ。こんなすぐ乗り換える女なんか居らんかった。
俺も自分で驚いてはいる。あんなに跡部を好きだった名前が簡単に俺のところに来たっちゅー事は、お前に対して本気やなかったって事やな。女にコケにされた気分はどうや、跡部。
「しかもあんな写真まで撮りやがって…」
「あれはお前のファンの仕業とちゃうん」
「そんなわけない。俺はアイツだと睨んでいる」
「…俺の姫さんやから、勘弁してやってや」
俺がそう言うと跡部は煮え切らない返事をして部室を出て行った。
別に、跡部が名前に仕返しをしようと俺には関係ないんやけど。あとは飽きるまで俺の隣に置いておく。そして飽きたらまた他の女を探せばええ。
…頭ではそう思っているのに心が少しだけ痛むのは何故なのか。
考えるのが面倒になって、部活が終わり俺の帰りを待っていた名前を教室で押し倒した。
20110903
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