―――というわけで、異世界に来て3日。
私は、改めて文化というか習慣というか、様々な面での様々な"差"を感じている。

まず、やはり普段着は着物だということ。
洋服が普段着で着物は特別な時にしか着ない世界にいた私は当然だが、着付けができない。下階のお登勢さんに恥を忍んで教わったが、正直まだわからないのでジャージか制服で過ごしてる。
だから、外出はあまりしない。目立つから。


あとは、黒船のかわりに天人が来ている。そしてそれは、さほど遠い昔話ではないこと。幕府が形だけとはいえ、現存してること。


最後に、万事屋の家計は毎日が火の車だということ。



夕方。夕食の買い物に、と銀さんに財布を渡されたが小銭しか入ってない。こんなんじゃ神楽ちゃんのお腹どころか、人間のお腹を満たすものも買えない。
私はなるべく、安いものを選んで買い物カゴに入れていく。

陳列棚下段にあるマヨネーズ。
本当はカロリーオフが良いけど、高い。妥協して普通のマヨネーズにしようか…。
うんうんと調味料売り場でしゃがみこんで悩んでいた。



「ほぅ、アンタ料理するんだな」



突然、久しい低音の声が頭上から降ってきた。振り返ると、真っ黒―――トシちゃん似のコスプレ男がいた。



「ご無沙汰してます。コスプレ男さん」


「誰がコスプレだ。お前こそ、その短ぇ丈のスカート、コスプレだろーが」


「本当、いちいち腹立ちますね」



私は、乱暴に普通のマヨネーズをカゴに入れて勢い良く立ち上がった。
ずっとしゃがんでから立ち上がったせいか、グニャリと視界が歪んだ。おそらく、コスプレ男からはフラフラとして見えたのだろう。コスプレ男は当たり前のように私を支えた。この人はこういう優しい人間なんだろうな、と内心思った。トシちゃんも優しい人だったし。



「すいません。ただの立ち眩みですから。それじゃ」


「おい」



コスプレ男の呼び掛けも無視して、レジへ向かう。そしたら、ヒョイとカゴが手から消えた。いや、正確にはヤツが持ってくれたわけで。



「ちょっと…っ」


「重…」


「ダサ…」


「おま…っ、持ってもらってそれはないだろ」


「頼んでませんし」



互いが互いに文句を言いながら、精算をそれぞれ済ませる。
お金は、残念ながら銀さんのくれたものでは足りなかったので、自分の財布からだした。









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