気が付けば夕焼けのオレンジと夜の藍色が混じった色が頭上を染めていた。
バッグと木刀の入った袋を担ぐミニスカの少女って、可愛さの要素が何一つない。
しかも、バッグにはジャンプとジャージと弁当が入っていて重い。


先程のコスプレ野郎の件でイライラしながら家に向かう道を歩く。その風景は相変わらず見たことのないものばかり。
しばらく歩けば、自宅のアパートが見え……………見えない。


「いや、いやいやいやいや。いつ改装工事したの?てか、"万事屋銀ちゃん"って名前ふざけてる」


その頃にはそろそろ私も疑わざるを得なかった。


ここは私の知らない世界ではないか。


それは所謂、「平行世界」「パラレル」「タイムスリップ」「トリップ」といった夢物語や妄想に等しいもの。
しかし、目の前には知らない建物や私を知らないと言った友人と同じ顔の人間。


今、ここで「貴方のいた世界とは全く異なります」と誰かに言われた方がすんなりと納得できる。
でも、誰もそれを否定も肯定もしないから私は「アパートはどこ?」などと言いながら歩きだす。


「おい、落としたぞ」


そう肩を私の叩く誰かの声。振り返り、突き出された手には指がなく、真っ白い。そこにちょこんとケータイが乗っかってる。拾ってくれた人物は奇妙な生き物(?)エリザベスだった。
隣には笠を深めにかぶったヅラがいた。


「あ、ありがとう…ヅ…」

「ヅラじゃない桂だ」

「まだヅラって言ってない…」


この微妙な切り返しがヅラだ。そう思った。

「ここに用があって来ているのだろう?恥ずかしがらずとも入れば良い。俺も用があって来たからな。何なら付き添ってやっても良いぞ。その方がこちらにも都合が良いのでな」

「はぁ……。この万事屋って、どんな人が経営してるの?」

「プーさまだ」

「プーさまっ!?あの!?蜂蜜大好きな?」

「蜂蜜が好きかは知らんが、糖分は好きだな。武士ともある者が甘い物を好むとは言語道断だ」


ここは本当に夢のワールドかもしれない。だって、あのプーさんが日光江戸村の様な場所にいると言うのだから。
しかもプーさんが武士って、なんというトンデモワールドだろう。





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