大通りをしばらく走ってると、その道がいつもと違う気がしてきた。てか、違う。
何が違うか、と聞かれたらわからないが、とりあえず違和感があることは否めない。

私は速度を緩めた。


ああ、こうしてゆっくり見ると目に見えてわかる。みんな着物を着ているんだ。祭でもあるのかもしれない。


「これだけ皆が皆着物だと、私がコスプレしてるみたいだわ」


短いスカートが歩く度に揺れる。

てか、祭でもこんだけパーフェクトに着物だと世の中の普段着が着物みたいだ。
何か、心なしかチラチラと見られてる気がする。


気にしないフリをして颯爽と歩いてると、私と同じくらい、いやそれ以上に風景に馴染めてないコスプレ二人組が。
あ、この言い回しだと私もコスプレみたいじゃない。

真っ黒な喪服みたいな服。
よく見れば帯刀している。何かの撮影か?カメラないな。
あ、こっち見た。いやガン見だよ。うわ、一人こっち来た。撮影中じゃないのか。

あれ?よく見たら…トシちゃんに似てる。


「オイ、てめぇ妙な格好してんな」

「はぁ…」


トシちゃんと思しい人物は、それだけで人を殺せそうな目で私を見た。
てゆーか、真っ黒な服着てる人に言われたくない。それも充分妙な格好だと思うんだけど。
…という思考が伝わってしまったのかわからないが、彼はため息を吐いた。

ため息吐きたいのは私なんだけど。


「ねえ、私の友人に激似なんですけど、私の事わかりますか?」

「は?俺にコスプレが趣味な友人はいねーよ」


カッチーン。

トシちゃんはこういう事言う人じゃない多分。いや、言われたことあるような気もしないけど。


「すいません、人違いでしたっ!!私の友人はもっと格好よかったもん。それじゃ、さよなら喪服野郎」


速歩きで去ろうとする私の腕を掴む偽トシは振り向いた私に言った。


「そんなに足露出させてると、襲われても文句言えねーぞ。」


顔に血がのぼって、熱くなるのがわかる。単に恥ずかしいんじゃなくて、トシちゃんにそっくりな顔で言われたのが、何か言葉にし難い感情になってく。
だから、私はその腕を振りほどいて走った。パンツ見えるかもしれないけど、アニメとか漫画ってギリギリ見えない仕様だから大丈夫だと信じて全力で走った。


「ありゃ、パンツ見てくださいって言ってるようなもんでさァ。あ、見えた」


後から来た沖田総悟が少女の後ろ姿を見ながら土方の隣りにしゃがんだ。


「土方さん、何色か知りたいですかィ?」

「いや、いい」

「本当は知りたくてたまんねーくせに」

「………」


江戸の町が夕日に染まっていく。





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