朝、目が覚めると布団には千緒だけが眠っていた。 醒めない頭を必死に巡らせ、時計を見遣ると、短い針は「9」と「10」の間で、長い針は「6」をさしていた。
何時だっけ…、今日…学校…あ、ジャンプ買ってないから…
「うあぁああっ!!遅刻じゃん!!」
ガバッと起き上がり、制服に袖を通す。テーブルを見ると、卵焼きが皿に盛ってあった。丁寧にラップまでしてある。その皿の隣には、袋に入った弁当。
「えーっ!!先生お弁当作ったの!?すごっ!!」
自然とニヤニヤしながら、それを鞄に詰める。更に適当に持ち物を詰めて、卵焼きを頬張る。10時前には家を出ようと決めて、適当過ぎるくらい雑に歯を磨く。
「あー、寝癖…っ!!まあ良いや。ああ、あと部活の木刀」
銀魂高校の剣道部は形式的な剣道ではなく、実践的な剣を学ぶ部活らしく、竹刀より木刀を主流に使っている。 その木刀が千緒の家にあるのは部員だから、ではなく銀八が「物干し竿に良いかも」と、一時期物干し竿が折れていた時に拝借したからである。 結局、使われることはなかったのだが。とにかく、それを細長い袋に入れて千緒はドタバタと家を出た。
帰ってきた。
「財布と鍵忘れたぁあああ!!」
靴のまま家にあがり、財布と鍵をぶん取り再び家を出た。
帰ってきた。
「電気消したっけ?あ、消してるし。自分偉いわ」
バタン、と閉まった扉。 その後、ガチャンと鍵を閉める音がした。
家を出た直後、千緒のケータイに着信があった。
「もしもし?」
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