大好きでした、とは余りにありきたりな言葉だ。

未練タラタラ。ああやだやだ。


「みっともねー顔」

「もとからだ」

「そーかィ」


隣に座る沖田がウザい。何でわざわざ。腹立つな。


「あんね、チョコより好き」

「……」

「パフェよりも好きで、大福の10倍好き」

「あまあまでさァ」

「角砂糖100個より好きで、おしるこの50倍好き」

「うぇぷ。吐き気してきた」

「大好きだったの」


今日は月が白い。マシュマロみたいに真ん丸。
ああ、私、恋してた。


「空気を吸うより大切で、江戸の平和守るより大事。」

「それで?」

「クッキーの70倍好き。土方さんの80倍好きだった。」

「名前、ひとつ言っても良いですかィ?俺ァ、それ以上聞きたくないでさァ」


お願いだから、と沖田はこちらを向いて、唇を押し付けた。
舌なんて入らない、フレンチなキス。

ああ、少し貴方みたいに辛(ツラ)そうな辛(カラ)みが唇を刺激する。


離れた唇で紡いだ言葉は、ただ一言。


「沖田さんの100倍、銀さんが好きだったの」





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