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沖田が拾ってきた犬…じゃなくて女、マゾ子(仮)は、死んだように寝ている。
歳は十代後半から二十代だろう。非常識な白とも金とも言えない髪色は正直天人かと疑う程の色だ。
どこか悪いのか、その寝顔はとても穏やかとは程遠い。



「う…ぅ」



その日の夜、マゾ子(仮)は重たげな瞼を持ち上げた。
上体を起こして、頭に手をあてた。



「あいたた…。ここ、どこだし」



回らない頭をフル回転させても、マゾ子(仮)には此処が何処だか見当もつかなかった。

程無くして、真選組の監察の山崎が食事を持って現れた。



「あ、マゾ子さん、気がつきました?」


「(マゾ子?)え…あ、まぁ」


「食事、持ってきたんですけど」


「もしかして、随分お世話になっちゃった感じ…ですか?」


「うーん、お世話っていうか、沖田隊長…ウチの上司が倒れてた君を放っておけなかっただけだし、それに警察だからね」



ふーん、としばらくマゾ子(仮)は感心していたが段々と表情が歪みだした。次第に冷や汗まで流しだした。


「けけけ、警察っ!?」


「うん。真選組って、名前ぐら「真選組ぃいい?」



マゾ子(仮)は立ち上がって「お世話になりました」と部屋を出た。しかしそれは、様子を見に来た土方に止められた。



「土方、十四郎…っ」


「何でさァ、マゾ子と土方さん顔見知りだったのかィ?」


「いや、知らん。てかお前、顔色悪ぃが大丈夫か?」



構えたマゾ子(仮)は、右手を左腰に宛がうが空を切る。その動作はまるで、左腰に差してある刀を探しているようにも見えた。



「うぅ…っ、頭…いったぁ…」



だが突然、マゾ子(仮)は頭痛が酷いようで頭を両手で押さえたままゆらゆらと二、三歩踏み出してパタリと倒れた。



「おいっ!?」


「マゾ子さん!?」



マゾ子(仮)は、外野の声を遠くに聞きながら目を閉じた。





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