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再びマゾ子(仮)が目を覚ましたのは、翌日の昼前だった。
相変わらず見知らぬ部屋だが、今度は戸惑わなかった。
部屋には誰もいなかった。しんと静まった部屋に懐のケータイのバイブ音が響く。



「もしもーし?今、しんせ………は?いやいやいや…………え、ちょ…!!」



通話はものの30秒も掛からない内に終了した。今の短い通話で相当腹を立てたのか、乱暴にケータイを閉じた。

突然、障子越しに聞き覚えある声がした。



「あ、気がついた?山崎です」


「あー、うん」


「副長が呼んでるんだけど、大丈夫?」



マゾ子(仮)は返事をしないで、障子を開けた。そこには正座した山崎がいた。それを見下ろすマゾ子。



「めんどくさいけど、行く」


「マゾ子さん…気分は大丈夫?」


「マゾ子じゃねーし」



山崎は「じゃあ名前教えて下さい」と言おうとしたら、マゾ子(仮)は既にスタスタと歩き出していた。



「ジミー、置いてくよー。あ、場所わかんないんだった。はやくー」



ダルそうにマゾ子(仮)は、間延びした声で呼び掛けた。



「あーそだ、ジミー」


「(ジミー?)何ですか?」


「私、たったさっき仕事と住む場所なくなったんだけど、ここに居候できねーかなぁ…」



いや、出来ないっしょ。

と、山崎は内心思ったが口には出さなかった。
目的の部屋に着くと「たのもー」とか言いながら、スパーンと障子を開けるマゾ子(仮)を見た山崎は、コイツ馬鹿かもしれない、と思ったがコレも口には出さなかった。





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