餅焼く仲は睦まじきかな 2/5
自分以外の奴の名前など呼んでくれるな、なんて馬鹿みたいな独占欲だろうか。 精神的に幼稚過ぎるにも程がある。 相手だってもう青年なのだから、それなりの交友関係がない方が異常だろうに… 解ってはいる。 しかし、それが面白くないのもまた事実。 「おーおー、何だ何だ痴話喧嘩か」 ハントはケラケラと笑って、取り残されたロナードの肩を叩く。 「……………何か用か?」 「お前…相変わらずレイナス以外には潔い程無愛想だな…」 ちらりと向けられ、また戻された視線に苦笑したハントは、特に気分を害した風でもなく「別に用っていう用でもないが」と付け足した。 「仲が良いなぁって思ってよ」 この様子のどこにそんな形容を当て嵌めるつもりなのかと、ロナードは溜息を吐く。 「ははっ!――今、"何でそんな事言うんだ?"って顔したな」 「……………悪いか」 「青いねぇ」 「は?」 顎髭を撫でながら、にやにやと意味ありげにロナードを見遣るハントは、見るからに楽しそうである。 「お前にも、そういう餓鬼みてぇなとこあるなんて――意外っつうか…いや、まぁ年相応ったらそうかもしれねぇがな…」 「もう少しはっきり言ったらどうだ」 のらくらしたハントの物言いに、いい加減痺れを切らしてきたロナードは、刺々しく問い詰める。 「その様子じゃあ、気付いてねぇんだな。やっぱり」 ハントは次第に苛立ちが表立ってきたロナードに小さく耳打ちをした。 「―――!?」 耳打ちが最後まで終らない内に、ロナードの足はレイナスを追い掛ける様駆け出した。 ページ: |