餅焼く仲は睦まじきかな 1/5


(そしたらその時ヴァイスがさー)


(聞いてくれよ!ハントったらまた…)


(この間ザードと話してたらな、)



嗚呼、苛々する。



【餅焼く仲は睦まじきかな】



「なぁ、ロナード。聞いてるのか?」

酷く立腹したと言わんばかりに、レイナスは眉を吊り上げた。

「……………」

「ロナードったら」

「……………ん?…あぁ、すまん」

目の前で片手を振られるまで、思案に耽って碌に相槌も打たなかったロナードは、まるで気のない調子で詫びる。
気のない、というのは些か語弊があるかもしれない。
彼の口から発せられる言葉の大半は、いつも一定のトーンであるからだ。

「どうしたんだよ、一体。…最近ずーっとそうだ。俺と話すといつもボーっとしてる!」

対して、親友であるレイナスは感情に素直が過ぎる為に、傍目からは二人の間に居心地の悪い温度差がある様にも見えるのだが…
そんな事は当人等にとってはさしたる問題ではない。

「……そんな事はないが…」

彼等の問題はもっと、一般的で単純明解。

「今日だけじゃないだろ、俺の話聞き流してるの」

「……………それは、」

「いいよ、もう――ロナードには話さないっ!」

言い訳など聞いてやらぬと、レイナスはぽこぽこと蒸気を放ちながらラウンジを後にした。





(お前が俺以外の名前を出すなんて!)



(お前が俺以外の何かを想うなんて!)





単純であるが故に、思い至らぬ解決策。

問えば済むだけ、終るだけの拗れである。

にも関わらず、二人は滅法頑固だった。

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