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【君が望むままに…】


「いい?どっちが選ばれても恨みっこなしだよ」
「ああ、構わん」
扉を前にして何やら話しているのはマルスとアイク。二人の間には闘志がぶつかりあっているようで、バチバチと火花が燃える音が聞こえてきそうだ。
彼らが何にそこまで必死になっているのかというと…その答えは、扉の向こうにあった。

「「なまえ」」
「あ、アイクにマルスじゃない。どうしたの?二人揃って」
扉を開けると、そこにはなまえの姿があった。子どもたちと遊び終えて、一人で休憩している様子の彼女に、二人は歩み寄る。
そして、口々にこう誘いをかけたのだ。

「なまえ、気分転換に街にでも行かないかい?紅茶が美味しいカフェを見つけたんだ」
「え?」
「いや、それより俺と森へ行くぞ。見せたい場所があるんだ」
「え?え?」
二人から同時にそんな提案を受けて、なまえは面食らっているようだ。
状況についてこれていないなまえを他所に、二人は言い争いに移行する。

「森なんて。まったく…アイクはデリカシーってものがないねぇ」
「ふん、街なんてうるさい奴らばかりだろ。なまえは静かな場所が好きなんだ」
「なまえは華やかな場所の方が似合うんだよ」
「えーと…二人とも…?」
お互いの言い分が交錯する中、その間に置かれたなまえは戸惑ってそれぞれの顔をキョロキョロと見上げるばかり。

「アイクはなんかいつも野暮ったいんだよね。そんなんじゃ女の子は喜ばないよ」
「お前が気障なだけだろ。金をかければいいってもんじゃない」
「ちょっと、まるで僕が物で釣ろうとしてるみたいに言わないでくれない?」
「事実だろ。まったく、王子様とやらは一般人と価値観がかけ離れてるな」
「へえ、言ってくれるね」

はっきり言ってなまえそっちのけでヒートアップしている二人。その様子を見ているなまえは気が気でない。どうやら自分のことで二人が揉めているという事実だけは飲み込めているようだ。

「ねえ、なまえはどっちに行きたい?」
「え?!」
「そうだな、なまえがどちらかを選べば話は早いわけだ」
「ええ?!」
急に決断を迫られ、なまえは焦り出す。いきなり現れてひとしきり言い合いをして、今度はどちらかを選べなどと言われても…と、なまえは困り果ててしまった。
そんな彼女が何かを言い出そうとした、その時だった。

「おーい、なまえー。準備できたかー?」
「あ、ロイ…」
「あれ、マルスもアイクもいるんだ。珍しいな二人が一緒にいるなんて」
扉を開け、部屋に入ってきたのはロイ。
思いがけない人物の登場に、今度はマルスとアイクの二人が驚く番だ。

「あのね、私これからロイとトレーニングする約束をしてたの」
「たまには俺も乱闘しないとな!体がなまっちまう」
「だから、二人ともごめんね?」
「なんかあったのか?ま、いいや。行こうぜ!」
「うん。じゃあね、また今度誘ってね!」
立ち尽くす二人に微笑んで、なまえはロイと共に部屋を後にした。

「「――……」」
声をかけることも出来ずに、彼らはその背中をぽかんと見詰めるだけで…。なんというか、哀愁が漂っている。

「…ふ、ふふふ…。まさか、ロイに先を越されるなんてね…」
「あいつ……殺す…」
「夜道に気を付けなよ、ロイ…ふふふ…」
今この瞬間に、二人を黒々としたオーラが包み、静かな殺気が部屋に満ちていった。さっきまでとは異なり、それは二人を違う意味での強い絆で繋いだのだった…。


(あれ、なんか……寒気が…)
(ロイ大丈夫?風邪でも引いたの?)

その後、ロイの姿を見た者は居ないのだとか…。




14.01.27
5400キリリク「FE組による夢主取り合い」
こんなのでいいのかしら…

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