小説 | ナノ



【a nurse in white】


「また貴方なの?」
誰もいない救護室のベッドで寝てたら、いつの間にかここの主が帰ってきていた。目を開けると、真っ白な色が見える。
首には聴診器、手にはたくさんの書類を抱えたその人。

「ああ、なまえ」
「本当によく来るわね。まあ、貴方だけじゃないけど」
「だって、乱闘がないとやることないし」

それに、なまえに会いたかったしさ。
なんてね。そんなふうに言えたらどんなに楽か。

なまえはこの屋敷の救護員。乱闘は基本的にマスターハンドの力で怪我とかしないようになってるけど、それ以外の場所での怪我や体調不良なんかを診てくれる。
子ども組は遊んでる時に転んだりして怪我するし、体が決して丈夫じゃない姫様たちはここに来ることも多いらしい。

それに、ただ単になまえ目当てで来る人もいると思う。本人は無自覚らしいけど、なまえはファイターの間では「超」がつくほどの人気者だからなぁ。狙ってる人が結構いる。まあ、かくいう僕もその一人なんだけどさ。
きっかけは、単純に一目惚れ。この屋敷にきて初めてなまえを見た時、胸が苦しくなったのを今でも覚えてる。
うかうかしてると誰かにとられちゃいそうで、気がついたらここに足繁く通っている状態になってしまった。

「それで、一応聞くけど、どこか悪いの?」
「うーん、どうかなぁ…」
「え?」
「体調不良っていうか、最近なんか苦しくて」
ただ理由もなく僕がここに来たと思っているなまえは、僕が意外にも真剣な返事をしたもんだから、顔付きがマジメになった。
近寄ってきたなまえに顔を覗きこまれて、ドキリとした。長い睫毛が縁取る大きな瞳に、吸い込まれそう。
ああもうこれ、完全に恋の病だよね。

「苦しいって、息が?それともどこか痛いの?」
「どうだろ。なんか、ここら辺がね、鷲掴みにされたみたいな…」
「ん―…胸部ね……な、ッ!?」
少し屈んだなまえの腕をグイッと強く引っ張って、体勢を崩した隙にその唇を奪った。
一瞬のできごとに呆然とした表情のなまえ。何が起こったのか理解できません、て感じ。

「ピ、ピット…!?いま、なに…」
「あ、苦しいの治った。なまえありがとね」
「ちょっと!人の話…!」
瞬間遅れでようやく慌て出したなまえをベッドに残して、僕は立ち上がって歩き出す。
部屋を出る直前に背中の方を振り返ったら、真っ赤な顔のなまえが見えた。

恋の病、治せるのは僕の白衣の天使だけ。




14.01.16
ベタシチュすぐる\(^o^)/

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