小説 | ナノ



【ふつうってなあに?】
※ヒロインはトリップしてきた小学生


あの子に近づいちゃいけないよ…
あの子は普通じゃないんだから…

「ふつうじゃない、か…」
記憶の中で、もう何度も聞いた台詞がまた甦る。みんなが私に向けるあの冷たい目。そして、突き放すように鋭い言葉。
いつだってそうだった。私とみんなの間には、超えられない何かがあった。だから私はいつもひとりぼっちだったの。

「またこんなところにいる」
「っ!…あ、えっと…ネス…くん」
屋上の片隅で座り込んでいたら、背後から声をかけられてびっくりした。振り返ってみると、野球帽をかぶった男の子。この屋敷の住人で、ファイターなんだっけ。

「もう、『くん』とか『さん』とかいらないってみんな言ってるでしょー。ネスでいいよ」
「う、うん…。ネス」
私が突然ワープ(?)しちゃったこの世界。ここは、こんな男の子までファイターとして戦ってる世界だった。なのに、みんな凄く楽しそうなの。私にはよくわかんないよ。
こうして隣に座ってきたネスだって、普通の男の子に見えるのに。空を飛んだり、手から炎出したり…びっくりしちゃった。

「なまえはいつもこんなとこに隠れてるよね。みんななまえと遊びたいのに」
「あ…。だって、私はみんなと一緒にいちゃいけないから…」
「え?」
私が口にした言葉に、ネスの顔が強張る。どういうことなのかとこちらを覗き込むネスに、私は下手な笑顔を向けた。

「私は普通じゃないから、みんなのそばにいちゃいけないの。ずっと、そう言われてきた、から…」
「誰に?」
「え?」
「誰にそんなこと言われてたの?」
「誰って…クラスの子の、お母さんとか…先生とか…」
言葉にするだけで、自分でもつらくなってくる。涙で滲んで見えるネスの顔は、それでも真っ直ぐに私に向けられていて…見つめ返すことができなかった。

変な子だって思われちゃったかな。
また、嫌われちゃうのかな…。
そんなことを心で呟いて、目を伏せる。その、次の瞬間だった。

「くだらないね」
「…え?」
聞こえた言葉は、私の予想とは違うもの。地面に向けていた視線をもとに戻すと、優しい瞳が見えた。

「普通って何?みんなと同じことが普通?みんなと違うことはいけないことなの?そんなの、くだらないよ」
「…ネス……」
「だったらなまえはここでは普通だよ。ここには僕らみたいな人しかいないんだからさ」
目からこぼれ落ちた涙を優しい手が拭ってくれる。鮮明になった私の視界で、ネスはニッコリと笑った。
私の心の中にずっと漂っていたモヤモヤは、ネスによってすっかりなくなったみたい。

「私は…」
「うん」
「私は…みんなと一緒にいてもいいの…?みんなと、遊んでもいいの?」
「いいに決まってるでしょ。みんなはそうしたいと思ってるよ」
「…うん!」
行こう、って差し出された手を握って駆け出す。私は、いつの間にか笑顔になってたの。



普通の意味はよくわからないけどさ、なまえが悲しい気持ちになるなら、いらない言葉なんだよ。
この世界には、そんな言葉は必要ないんだからさ。

「なまえ、みんなで野球しよ!」
「うん!」

ただ、ずっと、きみが、わらってくれますように。




14.01.15
どう終われというのか\(^o^)/

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