小説 | ナノ



【友達になろうよ】
※ヒロインは子どもファイター設定


世の中には、不思議なことがあるものだ。

「なまえは本当かわいいねー」
「ちょっとマルスーおろしてー!」
「えー、どうしよっかなぁ」
「ピカチュウたちと遊ぶ約束してるのー!」
今俺の目の前で何が行われているのかというと、マルスがなまえを抱き上げてじゃれついている状態。
なまえは俺と同じ時期にこの屋敷にやってきたファイターなのだが、どうやらマルスはそのなまえがお気に入りなようだ。いや、マルスだけじゃない。この屋敷のファイターは全員がなまえにベタベタな気がする。

「じゃあねなまえ、また後で遊ぼうねー」
「おい」
「ん?なんだアイクか。どうしたの」
「あのガキのどこがいいんだ?」
「はあ?」
去っていくなまえの背中に手を降るマルスに声を掛けて、聞いてみる。俺にはわからないんだ。どいつもこいつもこぞってなまえに甘い理由が。

「他のガキと何が違うんだ?俺には同じに見えるんだが」
「えー、アイクはなまえの魅力がわからないの?本当もったいないよ人生損してるよ」
「――……」
そこまで言わなくてもいいだろう、と思いつつ、マルスの口からとどまることなく出てくる「なまえの魅力」に耳を傾けてみた。


「…とまぁ、こんな感じかな」
「……長すぎるだろ…」
何だかんだと30分も付き合わされた。しかし俺の頭には余り入ってこないことばかりだった。
というか、所々危ない単語が混ざっていたのは気のせいか…?やはりリンクが言った通りマルスはロリ…なんとかなのか。

「もういい。お前の言うことはよくわからん」
「アイクもなまえと仲良くなれば僕が言ったことの意味がわかるよ」
「仲良く?」
「だってアイク、なまえが気になるんだろう?だから僕にあんなこと言ってきたんじゃないの?」
…まあ、確かになまえのどこがいいのかと聞いたが…。だからといって、俺は別に仲良くなりたいと思っているわけでは…。

「まあまあ、これでもあげてきなよ。そうすれば仲良くなれるからさ」
「…なんだこれは?」
「キャラメルだよ。なまえはこれに目がないんだ」
マルスが俺に渡したのは、四角い形をした菓子だった。物で釣るのか、と思ったものの、最近の疑問を解決するチャンスだと考え直し、それを受け取ってマルスと別れた。



「なまえ」
「ん?あ、あれ…えっと…」
「アイクだ」
「アイク、さん…」
「アイクでいい」
ピカチュウたちと遊び終えたのか、一人で廊下を歩いているなまえを発見して声をかける。すると、なまえは少し戸惑っているのかオドオドした様子で俺を見上げてきた。
無理もない。こうして面と向かって話すのは初めてだからな。とりあえず名前をちゃんと教えておく。

「んじゃ、アイク。どうしたの?」
「手を出せ」
「んぅ?」
まだ少しぎこちない様子でそろそろと差し出された小さな手の平に、さっきマルスからもらったキャラメルを転がす。
それを見た途端、その表情はとても嬉しそうなものに変わっていった。

「わぁ!キャラメルだぁ!」
「やる」
「ほんと?嬉しい!ありがとう!」
よほど嬉しかったのか、俺に飛びついてきたなまえ。受け止めてやると、その笑顔がすぐ近くにあった。
何だか心が温かくなるような、そんな笑顔だと思った。他の奴らが揃って使う「太陽みたい」という表現も、間違いではないと。

「アイク、あたしとお友達になってくれる?」
「俺なんかでいいなら、いいぞ」
「嬉しい!またお友達が増えた!」
そう言ってまた笑うなまえ。本当に菓子一つで友達になれるんだな。ガキは本当にわからんことだらけだ。その分、興味を持つのかもしれないな。
ずっとニコニコ笑っているなまえの頭を撫でたのは、完全に無意識だった。マルスが言っていたことの意味が、少しだけわかった気がする。まあ、俺はアイツみたいなロリなんとかじゃないが。

「アイク、アイク、これ一緒に食べよ」
「いいのか?好物なんだろ?」
「うん、だから一緒に食べたいの。お友達だもん」
「…そうだな」
なまえからもらって食べたキャラメルは、信じられないくらい甘かった。ただ、その甘さは嫌いな物ではなかったように思う。




13.12.03
ロリコンばっかりか、このゲーム!

42 / 113
/

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -