「あぁ。もう少し旅をしてから黒の教団に入団する。」
「そう…。」
表情が曇る。でもわかっていたことだから何も言わなかった。
先週、師匠が緋彗にエクソシストにならないか?と聞いたが、自分には荷が重い。理由がなきゃ入れない。と言っていた。
ユーくんやマーくん、デイシャやティエドールと一緒にいたいけど、そんな軽い理由で入れないよ。
それに義父さんや義母さんにも、ろくな親孝行してないからね。
でもここは任せて!ボラーノをアクマなんかに明け渡さないから!!
そう意気込む緋彗に師匠は諦めたらしい。
「
ねぇ。」
「あ?」
門の前で突然口を開く。
「また会える?」
「さぁな。」
オレがそう答えるとデイシャが、オレは会う気満々じゃん。と言う。
「私は任務のとき、近くを通ったら行くつもりだ。」
「ありがとマーくん!デイシャも一応あんがと。」
「そこは感謝の気持ち込めるべきじゃん。」
「大丈夫大丈夫。込もってる込もってる。」
『(絶対込もってない…!!)』
師匠が呼んだから、綱吉と京子に挨拶をしてから師匠のもとに向かう。
バイバーイ!と緋彗の声が聞こえたから振り向くと、泣きそうになりながらも笑って一生懸命に手を振っていた。
その姿が可愛くて顔が熱くなる。
「神田は手を振らないのか?デイシャなんて跳びはねながら手を振っているぞ?」
「うるせェ、いいんだよ。」
「神田、顔赤いじゃん。」
「斬るぞデイシャ!」
この13日後、綱吉と京子は緋彗のいないうちに殺され、緋彗は実験の日々を送ることになる。
理由を見つけた緋彗が黒の教団に入団するのは、灰色の戦線記に刻まれたもう少し後の歴史。 ←→ page: