31/32 「ここを出るの?」

「あぁ。もう少し旅をしてから黒の教団に入団する。」

「そう…。」


表情が曇る。でもわかっていたことだから何も言わなかった。

先週、師匠が緋彗にエクソシストにならないか?と聞いたが、自分には荷が重い。理由がなきゃ入れない。と言っていた。


ユーくんやマーくん、デイシャやティエドールと一緒にいたいけど、そんな軽い理由で入れないよ。
それに義父さんや義母さんにも、ろくな親孝行してないからね。


でもここは任せて!ボラーノをアクマなんかに明け渡さないから!!



そう意気込む緋彗に師匠は諦めたらしい。




ねぇ。」

「あ?」


門の前で突然口を開く。


「また会える?」

「さぁな。」


オレがそう答えるとデイシャが、オレは会う気満々じゃん。と言う。


「私は任務のとき、近くを通ったら行くつもりだ。」

「ありがとマーくん!デイシャも一応あんがと。」

「そこは感謝の気持ち込めるべきじゃん。」

「大丈夫大丈夫。込もってる込もってる。」

『(絶対込もってない…!!)』


師匠が呼んだから、綱吉と京子に挨拶をしてから師匠のもとに向かう。


バイバーイ!と緋彗の声が聞こえたから振り向くと、泣きそうになりながらも笑って一生懸命に手を振っていた。


その姿が可愛くて顔が熱くなる。


「神田は手を振らないのか?デイシャなんて跳びはねながら手を振っているぞ?」

「うるせェ、いいんだよ。」

「神田、顔赤いじゃん。」

「斬るぞデイシャ!」


この13日後、綱吉と京子は緋彗のいないうちに殺され、緋彗は実験の日々を送ることになる。


理由を見つけた緋彗が黒の教団に入団するのは、灰色の戦線記に刻まれたもう少し後の歴史。 page:
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