翼をしまって地に足を着くと、どっと疲れが襲って来た。
「大丈夫か?」
「いちおー…。」
ユーくんに返事をして血の海に座り込むと、周りから感じる視線。
目を向けると、遠巻きに化物と言う声が聞こえた。感じる視線はすべて恐怖が見える。
だから嫌なんだ。
ちっと舌打ちしてからニゲラ・ヘプバーンのもとに向かう。
ひっと息を飲むニゲラ。
くだらない。
「任務……完了…致しましたので……報酬の…25ギニーをいただきに…参りました…。」
ガタガタと震えながら紙幣を渡す。それは血濡れた僕の手に渡り赤く濡れる。
「またのご依頼…お待ち…致します。
…では。」
歩き出すと周りが歪む。そのうえ霞んでいるからまともに歩けやしない。傷は痛むけど、背中にあるものだけだし押さえようがない。それでも会場からの道を歩いて馬車に乗り込んだ。
ユーくんが手を貸そうとしてくれたけど、視線を感じるうちはどうしても借りれなかった。
殺し屋として、闇の世界に住まう者として…弱っているなんて知られちゃいけないから。
「ゲホッゲホゲホッ!」
「ケガ平気か?」
「
全然…。どこもかしこも痛いよ…。」
背中もそうだけど、それよりももっと、痛いものがあって、
それは、もっと別の場所で、
少しでも気を抜くとそれを吐き出そうと涙が、
鳴咽が止まらなくなりそうな…
「痛い…。」
「言わねェとわかんねェよ。」
ユーくんは僕の言いたいことがわかっているようで、僕の手当をしながら促してくれた。
「背中も痛いけど……もっと…もっと痛いところがあって…
それは家に帰ると治っていくんだけど…ずっと痛くて…
死なないんだけど…血は出ないんだけど…
潰れちゃいそうで…」
ほらね…
気を抜くと
話そうとすると目に水が溜まる。
「どこが痛ェんだよ…?」
「
…が、胸が痛いよぅ…。」
消えそうな…か細い声で俯きながら呟いた。ケガに触れないように背中を摩る。そうすると声がどんどん途切れていって涙声になっていった。 ←→ page: