28/32 「今度は…ホント…に…終わった…。」


翼をしまって地に足を着くと、どっと疲れが襲って来た。


「大丈夫か?」

「いちおー…。」


ユーくんに返事をして血の海に座り込むと、周りから感じる視線。
目を向けると、遠巻きに化物と言う声が聞こえた。感じる視線はすべて恐怖が見える。

だから嫌なんだ。

ちっと舌打ちしてからニゲラ・ヘプバーンのもとに向かう。

ひっと息を飲むニゲラ。

くだらない。


「任務……完了…致しましたので……報酬の…25ギニーをいただきに…参りました…。」


ガタガタと震えながら紙幣を渡す。それは血濡れた僕の手に渡り赤く濡れる。


「またのご依頼…お待ち…致します。

…では。」


歩き出すと周りが歪む。そのうえ霞んでいるからまともに歩けやしない。傷は痛むけど、背中にあるものだけだし押さえようがない。それでも会場からの道を歩いて馬車に乗り込んだ。

ユーくんが手を貸そうとしてくれたけど、視線を感じるうちはどうしても借りれなかった。


殺し屋として、闇の世界に住まう者として…弱っているなんて知られちゃいけないから。



「ゲホッゲホゲホッ!」

「ケガ平気か?」



全然…。どこもかしこも痛いよ…。」




背中もそうだけど、それよりももっと、痛いものがあって、




それは、もっと別の場所で、




少しでも気を抜くとそれを吐き出そうと涙が、




鳴咽が止まらなくなりそうな…






「痛い…。」

「言わねェとわかんねェよ。」


ユーくんは僕の言いたいことがわかっているようで、僕の手当をしながら促してくれた。


「背中も痛いけど……もっと…もっと痛いところがあって…
それは家に帰ると治っていくんだけど…ずっと痛くて…
死なないんだけど…血は出ないんだけど…



潰れちゃいそうで…」



ほらね…



気を抜くと




話そうとすると目に水が溜まる。



「どこが痛ェんだよ…?」



…が、
胸が痛いよぅ…。」


消えそうな…か細い声で俯きながら呟いた。ケガに触れないように背中を摩る。そうすると声がどんどん途切れていって涙声になっていった。 page:
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