21/32 「くそぅデイシャの奴、自分だけ責任逃れしちゃってさ!なんだ暑そうだったからって。なんだ暑そうだったからって!」

「カリカリすんな。暑苦しい。」

「むぅ…。」


階段を上がる。中の鳥はデイシャとマリが、外の鳥はオレと緋彗が餌をやれとのこと。


「(真面目に暑いよ。6月のくせに暑いよ!つーかこんなに暑いのに服重ね着とかなんだ!明らかに虐めじゃん!!)」


緋彗は、う〜…と唸りながら張り付くワンピースをじっと見つめる。


「はぁ…。(前髪も張り付くしワンピースも張り付くし…。)」

「なに溜め息ついてんだよ。」

「んー…、なんかねぇ…ワンピースが張り付いて動きにくいの。」


見ると、ワンピースが張り付いて歩幅が狭く分、たくさん足を動かしていた。


「貸せ。オレが持つ。」

「いい。ユーくんのがカゴでかいし重いから。」

「全然重くねェ。いいから貸せ。」

「ん…わかった。」


ユーくんにカゴを渡すとすごく体が軽くなった。相変わらずワンピースは張り付くけど。


「ついでにさ、服も返すよ。」

「ダメだ。」

「まだ熱射病治ってないの?黒髪は確かに熱を吸収しやすいけど、そこまでなんて聞いたことないしなぁ…。」


タッとオレの前にいきなり出るから足を止める。緋彗はオレの両頬を手で自分の顔に近づけて額を合わせた。


「んー…、心なしかほてってるね。顔も少し赤いし…。大丈夫か?」

「当たり前だ。こんなんでへばるわけがねェ。(つーかお前のせいだ。)」

「ふぅん…。やっぱり僕、カゴ持つ。」

「いい。」

「うるさい。僕が持つの!」


バッとカゴを奪われる。一応、心配してんのか…?


…んなわけねェな。有り得ない。そう思い直して中庭に出た。



「暑…。」

「………。」


風が生温い。しかし緋彗は暑いの言葉を一切言わなかった。無言で駆け出し、真ん中を流れている川に足を突っ込んだ。


「冷たーっ!いいねぇここは!ユーくんもおいでよ!!」


ちょうど影になっているところに腰掛けながら呼んできた。

隣に座る。すごくひんやりしている。


「餌あげなくていいのか?」

「んー…あと10秒で来るから。」

「は?」


カウントを始める緋彗。バサバサと言う羽音と鳥の泣き声が聞こえ始める。



「3



1」


地面に降り立つ。そして


「0。Σうわっ!」

「すげ…っ!」


緋彗が0と言ったと同時に一斉にオレ達に向かって来た。

オレの方はおとなしめなのか、ゆっくりとした足取りのやつが、緋彗方は


「いたっ!ちょっ、手ェ食うな!それ手!!Σきゃうっ!スカートん中に入んなって!!」

「…………。」


襲われていた。羽ばたいて向かってくるからワンピースがめくれ上がるらしく、押さえていた。それだけじゃないが。


「ちょっ、どこ入ってんだ!!出ろ!今すぐ出なさい!!なんだこのませた鳥は。なんだこのませた鳥は!」


あろうことか鳥にキレている。どうせ言葉なんと通じないのに…。


オレが地面に餌を巻き散らかすと大半がそこへ向かった。


「おぉ…減った…。」


ア然としている緋彗。頭が弱いのか理解出来ていない。


「痛っ!耳啄むなよ!!きゃはははははっ!」

「(なんだコイツ…。)」


鳥に耳を甘噛みされて、擽ったそうに笑う。

いきなり笑い出したから少し引いた。でも笑顔は可愛かった。


「やっべ、もう夕方じゃんやっべ。」

「お前がやべェよ。キャラ崩壊じゃねェかコノヤロウ。」

「お前もな。
さーて戻ろっか!」


日が傾いて来た頃に屋敷に戻った。どんだけ餌やってたんだオレ達。昼メシ食ってねェから腹減った…。 page:
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