「カリカリすんな。暑苦しい。」
「むぅ…。」
階段を上がる。中の鳥はデイシャとマリが、外の鳥はオレと緋彗が餌をやれとのこと。
「(真面目に暑いよ。6月のくせに暑いよ!つーかこんなに暑いのに服重ね着とかなんだ!明らかに虐めじゃん!!)」
緋彗は、う〜…と唸りながら張り付くワンピースをじっと見つめる。
「はぁ…。(前髪も張り付くしワンピースも張り付くし…。)」
「なに溜め息ついてんだよ。」
「んー…、なんかねぇ…ワンピースが張り付いて動きにくいの。」
見ると、ワンピースが張り付いて歩幅が狭く分、たくさん足を動かしていた。
「貸せ。オレが持つ。」
「いい。ユーくんのがカゴでかいし重いから。」
「全然重くねェ。いいから貸せ。」
「ん…わかった。」
ユーくんにカゴを渡すとすごく体が軽くなった。相変わらずワンピースは張り付くけど。
「ついでにさ、服も返すよ。」
「ダメだ。」
「まだ熱射病治ってないの?黒髪は確かに熱を吸収しやすいけど、そこまでなんて聞いたことないしなぁ…。」
タッとオレの前にいきなり出るから足を止める。緋彗はオレの両頬を手で自分の顔に近づけて額を合わせた。
「んー…、心なしかほてってるね。顔も少し赤いし…。大丈夫か?」
「当たり前だ。こんなんでへばるわけがねェ。(つーかお前のせいだ。)」
「ふぅん…。やっぱり僕、カゴ持つ。」
「いい。」
「うるさい。僕が持つの!」
バッとカゴを奪われる。一応、心配してんのか…?
…んなわけねェな。有り得ない。そう思い直して中庭に出た。
「暑…。」
「………。」
風が生温い。しかし緋彗は暑いの言葉を一切言わなかった。無言で駆け出し、真ん中を流れている川に足を突っ込んだ。
「冷たーっ!いいねぇここは!ユーくんもおいでよ!!」
ちょうど影になっているところに腰掛けながら呼んできた。
隣に座る。すごくひんやりしている。
「餌あげなくていいのか?」
「んー…あと10秒で来るから。」
「は?」
カウントを始める緋彗。バサバサと言う羽音と鳥の泣き声が聞こえ始める。
「3
2
1」
地面に降り立つ。そして
「0。Σうわっ!」
「すげ…っ!」
緋彗が0と言ったと同時に一斉にオレ達に向かって来た。
オレの方はおとなしめなのか、ゆっくりとした足取りのやつが、緋彗方は
「いたっ!ちょっ、手ェ食うな!それ手!!Σきゃうっ!スカートん中に入んなって!!」
「…………。」
襲われていた。羽ばたいて向かってくるからワンピースがめくれ上がるらしく、押さえていた。それだけじゃないが。
「ちょっ、どこ入ってんだ!!出ろ!今すぐ出なさい!!なんだこのませた鳥は。なんだこのませた鳥は!」
あろうことか鳥にキレている。どうせ言葉なんと通じないのに…。
オレが地面に餌を巻き散らかすと大半がそこへ向かった。
「おぉ…減った…。」
ア然としている緋彗。頭が弱いのか理解出来ていない。
「痛っ!耳啄むなよ!!きゃはははははっ!」
「(なんだコイツ…。)」
鳥に耳を甘噛みされて、擽ったそうに笑う。
いきなり笑い出したから少し引いた。でも笑顔は可愛かった。
「やっべ、もう夕方じゃんやっべ。」
「お前がやべェよ。キャラ崩壊じゃねェかコノヤロウ。」
「お前もな。
さーて戻ろっか!」
日が傾いて来た頃に屋敷に戻った。どんだけ餌やってたんだオレ達。昼メシ食ってねェから腹減った…。 ←→ page: