6/32 傷口を消毒してガーゼをあてて包帯を巻く。


「痛い…。」


じわりと涙が出た。ホントは痛みからじゃなくて罪悪感からだと思う。



殺した。

子供を、殺した。

無抵抗なのに、殺した。



あの子自体に罪があるわけじゃないのに僕は生きるために殺したんだ。


いや、生きるためというのは建前なのでは…?


ホントは…本当は、


「止めよ…こういうの。」


疲れているんだ、きっと。これから暫く休んでるうちに忘れる。


「そしてあなたは瞳を閉ざす。」


だからせめて覚えている今だけ…


「息衝く灰の中の氷ひとつふたつと
沈むよろこび冷たい横顔。」


許してはくれないでしょうか?


「天に昇る幾千の夢。」


僕はね、わかってたんだ。


「黒赤と銀のゆらぐ朝に
天に召された褪せたお前。」


あなたを殺しても何も満たされないことは。


「幾億の年月が
いくつ祈りを土へ還しても
ワタシは祈り続ける。」


それが逆に僕を悩ませることが。


「どうかあなたに最期の愛を。」


許してとは言わない。だからせめて


「つないだ手に最期のキスを。」


安からに眠ってください。



僕は頭を振ってから医療道具を片付けて部屋に戻る。僕の部屋にいる奴を起こさないようにそっと入って、そのままソファーで寝た。 page:
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