4/32 「ここに…いる。」


目の前には城と呼ばれてもおかしくないような大豪邸。門を開けるとたくさんの家政婦やら執事やらが一斉にお辞儀。

女が一人の執事に何かを伝えるとどこかに行った。


「申し訳ありません。」


不意にさっきの男がオレ達に話し掛ける。


「お嬢様は少々気分が優れないのと英語があまり扱い慣れておりませんので、ここからは私がご案内いたします。」


そして領主の元へ向かった。








「オレはここの領主兼ボンゴレファミリーボスの沢田綱吉、こっちは京子。

緋彗から聞いたよ。クロスの紹介で来たみたいだね。」




ススキ色の髪の男。こいつが領主らしい。ボンゴレファミリーがなんなのかは知らない。


「緋彗?」

「あれ?名前聞いてなかったの?あの子は緋彗って言うんだ。」


デイシャが聞き直すと綱吉はそう答えた。


「あと悪いんだけどね、部屋数があんまり余ってなくてティエドール以外の3人の中で一人、緋彗の部屋で寝てくれないかな?残り二人は同じ部屋なんだけど。」

『じゃあ神田で。』

「なんでオレなんだよ。」


ギロッと睨むと、


「あの子、可愛いけどおっかないじゃん。」


とデイシャがしれっと言う。

結局、オレになった。


食事を取っているときアイツはやってきて、綱吉に紙を渡して何かを聞いてからどこかに向かった。


それを聞いていたデイシャがうわ…みたいな顔をいた。


「何と言っていたんだ?」

「次の任務はある一家の殺しの依頼。傷が痛むだろうけど、それ終わったらしばらく休み入れる。って。」


デイシャによるとボンゴレファミリーはイタリア一帯を取り仕切っているマフィアのようだった。


「大丈夫かな?緋彗の傷、かなり深かったけど…。」

「オレもそこが心配だけど、たぶん意地でも帰ってくるよ。人間なんかに殺されてたまるか。ってね。」


京子が聞くと綱吉は悲しそうに笑う。ここは悲しい表情が多い…。それに人間なんかって、まるで自分が人じゃない言い方だ。


「なんでアイツは悲しそうな顔をしてるんだ?見る限り裕福で、何不自由なく暮らしてんだろ?」

「やっぱりわかる?」

「それに人間じゃないんだろ?」

「知ってたんなら話しが早い。緋彗は親に捨てられた悪魔でね…下町の者に迫害されて来たから人間嫌いなんだ。」

「本当はすごく素直でいい子なのに、ここの者以外にはあまり笑わないの。いつも気丈に振る舞って、心はズタズタなのに平気な顔して家を出るのよ。」


人間嫌いか。あの言動を見ればわからなくもない。


「あ、ケーキ食べる?緋彗が焼いて楽しみにしていたものなんだけど。」


いいのかそれは。


「うまそうじゃん!」

「お言葉に甘えて…。」

「ユーくんも食べるかい?」

「いらん。それにユーくん言うな。つーか勝手に食っていいのかよ?」

「大丈夫だよ。ちょっと不機嫌になるくらいだし。」

「緋彗はそういうことじゃあんまり怒んないよ。」


それでいいのか?


結局オレは師匠に無理矢理ケーキを口に突っ込まれた。甘かったが美味かった。




その後、オレはアイツの部屋に向かった。




アイツの部屋の物は黒と白だけで、必要な物だけ置いてあった。いや、部屋のど真ん中に銀のゴーレムが入った鳥籠もある。


ベットで寝ても全然平気だから。と綱吉が言っていたから、シャワーを借りてそこで寝た。 page:
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