思ったよりもあっさり、夏休みは終わってしまった。おじさんに付き添ってもらって行った病院で手術の日取りを決めた結果、ボルトが抜けるのは九月末頃になった。先生に手紙で事情は伝えてあるものの、二、三日は授業を休まなきゃいけないのが面倒だ。
 隠れ穴での最後の夜、前日に書き出していた必要なものリストの買い出しを終えた私が戻ると、モリーおばさまが魔法で夕食を作ってくれていた。急いで買い出したものをトランクに詰めてキッチンに向かって、料理を並べるのを手伝う。ロースト・ビーフにヨークシャー・プディング、私の好きなコーニッシュ・パスティもあった。食事の終わりに冷蔵庫から糖蜜パイをハリーに出して見せるとゴクリと喉を鳴らしていた。彼は糖蜜パイがだいすきなのだ。
 デザートまでぺろりとたいらげ、一息吐くとなんだか眠気が襲ってきたので、気分転換に一人外に出る。空はすでに真っ暗で、月と星と、隠れ穴の家の灯り以外に夜空を照らすものは何もなかった。プリベット通りの、あの家のせめぎ合った場所じゃこうはいかないんだろう。遠くの方で、パンパン何かが爆ぜる音と歓声と笑い声が聞こえる。すると、なんだか目が熱くなってどうしようもない気持ちが込み上げた。夜は、あんまりよくない。どうして、私はあんな風にうまくいかないんだろうって、変な考えばかりが浮かんでくる気がした。
 地面に寝転がって、乱暴に瞼をこする。喉には熱い塊がまだ居座っていたけれど、ひくつく喉の奥をゆっくり広げて深い呼吸を繰り返せば、また元の私が戻ってくる感覚がした。火照っていた体温に、少し涼しい夜風は心地がいい。


「何してんの?」

「…星を見てたんだよ。」


 顔に乗せていた腕をのけて目を開くと、ジョージが顔を覗き込んでいた。目を瞑ってどう見てたって言うんだ。と指摘されて、嘘を吐いたことを素直に白状する。もっと、遠くにいたと思ったから、何も考えず雑に返しただけなのだ。なんだか今は、何も考えたくなかった。
 ジョージの奥にある空に目を向けて、夏の大三角形を成す星の名前と星座を反芻する。ベガとデネブを軸にして三角形を反転させて、アルタイルと線対称の位置を頭の中で描いてから北極星を見つけ出して、そこから今度はカシオペア座と北斗七星の場所を割り出していると、ジョージが隣に座ったのがわかった。


「お袋がココア入れてたよ。」

「うわあ、いいなあ。飲みたいけど、動きたくないな。」

「そう言うと思ったから持ってきた。熱いから気をつけて。」


 してやった、というような顔で笑うジョージにつられて思わず私も笑う。さすが。と言って起き上がって受け取ると、お褒めに与り、光栄です。とあぐらをかきながら恭しく会釈した。こうやって、私があまり気負わなくて済むように適度にふざけてくれるんだから、本当にさすがとしか言いようがない。
 ココアの表面に息を吹きかけてそっと口をつけたけれど、まだまだ熱くて、熱っ、と唇を離すとジョージが、熱いから気をつけてって言ったのに。とクスクス笑う。


「結局さっきは何してたんだ?」

「考え事だよ。あんまり、人には言わない方がいいような考え事。」

「それって、家のこと?」

「わかんない。」


 けど、ただ、ここはなんでもできるところだなって思ったよ。そう口にしてココアを含むと、ジョージは、何もないところの間違いじゃないの?と怪訝そうな顔をするから、間違いじゃないよ。と首を横に振った。


「私のところは、星があまり見えないよ。」


 気付いてほしいような、ほしくないような、私の醜い中傷をとても曖昧に口にすると、ジョージは、へえ。と妙に納得したように頷く。確かに、そういう意味じゃここは満点だ。と私の背中を撫でた。


 翌日、九月一日。私は鶏の時の声よりも早くに目覚めた。ジニーが起きないようにそっと抜け出し、着替えてから下に降りて身支度を整えて、朝食作りに取り掛かった。勝手に開けてもいいとすでに了承を得ている冷蔵庫からベーコンと卵とバター、ミルクを取り出し、ボウルに卵を割り入れる。片手で割る練習なんか、今まで一度もしたことなんかなかったから最初は苦戦していたけれど、今では一応卵の殻をボウルに入れずに割ることはできるようになったのだ。
 右腕のギブスとお腹でボウルを挟んで固定し、左腕で卵をかき混ぜてからミルクと砂糖を加えて再び混ぜる。そこにパンを浸してからベーコンを少しだけ切って、フライパンで炒めていると食欲をそそる香りがキッチンに広がった。ベーコンをフライパンからお皿に移して、今度はバターを落とす。ゆっくり溶けていくバターをフライパンを傾けることで広げて、それから卵に使っていたパンを乗せた。バターと、それから砂糖の香ばしい匂いはベーコンの匂いととてもよくあっていると思う。両面とも少し焦げ目がつくくらいに焼いてベーコンを乗せたお皿に盛り付けていると、鶏の声が隠れ穴に響いた。テーブルに着いて、一人、フレンチトーストを齧っていると、ドタドタという足音がいくつも頭の上から響いてきた。今日は、特急に乗ってホグワーツに戻る日なのだ。

 私がのそのそと優雅に朝食を口に運んでいる間、みんなは忙しなく家中を駆け回っていた。おばさまは、靴下や羽ペンを探し回ってご機嫌斜めだったし、みんな半分パジャマのまま、食べかけのトーストを持って階段のあちこちで何度もぶつかり合っている。みんな、まさか、今日用意を始めたわけじゃないよね?
 ベーコンを噛みながら庭を呆然と見ていると、ウィーズリーおじさまが、ジニーのトランクを車の方へ運んでいる途中、鶏に躓いて、危うく首の骨を折りそうになっていた。私はみんなの邪魔にならないように素早く食器を洗って片付けてから、ホグワーツのシャツやベスト、スカート、ハイソックスに着替え(汽車の中で着替えるのは面倒なのだ)、すでに外に放っていたカプリコを呼び出す。重い荷物はお前が運んでくれないかと顎を撫でると、彼は一鳴きして大きな翼を広げて家の中へ滑るように入って行った。私なんか、ファブスターおじさんに新しい馬具とかレイピアとか色々買ってもらったから、みんなよりも用意が遅くなったんだとばかり思っていたけれど、どうやらそれは違ったみたいだ。
 三十分後、私のものを含めたトランク七個、鳥籠三つとケージ一つがやっと車の側に並べられた。それを見た私は、勿論フォードの小型車アングリアに詰め込んで一回で移動することは諦めた。魔法で中を広げているらしく、空間的な余裕はあったけれど、時間的な余裕はほとんどなく、さすがの私も焦り始める。モリーおばさまは、みんなが車内で悠々と収まっているのをみて、マグルって、私たちが考えているよりずーっといろんなことを知ってるのね。そう思わないこと?と公園のベンチのように引き伸ばされた助手席を指して機嫌良く言っていたが、正直、呑気にそんなことを言っている時間は疾うに過ぎている。そもそも私はカプリコに連れて行ってもらう予定だったから、時間ギリギリだろうがあまり関係ないのだが、彼らは違う。車でキングクロス駅まで向かうのには高速道路を使っても一時間近くはかかるのだ。
 みんな、もう九時半だよ。事故だけは気をつけて。と急かしながらも送り出し、私も戸締りを開始する。すると、すぐに車が戻ってきた。


「おかえり、早かったね。」

「違う!長々花火を忘れたんだ!」


 また買ってきたらいいじゃないかと薄目になる私の横をジョージがビュンと駆け抜けた。今度こそ出発したと思ったら、五分後にフレッドが箒を忘れたと階段を駆け上がっていく。どこまでも慌ただしい。
 どうやらこの家にギリギリまで居てもゆっくりできないらしいので、フレッドが家から出たのを確認してから出入り口を閉じて私も駅に向かうことにした。トランクを片手に、カプリコを肩に乗せる。キングクロス駅傍の、人気のない場所がいいな。そう彼にお願いすると頭を私の首元に摺り寄せてから、ボッと急に燃え上がった。そして、私は、ぐにゃりと曲がった。


「うぇえ…。」


 ドスンと急に足が地面に着いて座り込む。胃の中が全部ひっくり返されたような気分だ。カプリコがなんともないような顔で私の様子を伺った。


「大丈夫、慣れてないだけ。ねえ、姿現しもこんな感じなの?」


 私の質問に首を傾げたカプリコに、なんでもない。ありがとう。と嘴にキスをする。しばらくは籠の中で我慢してね。と鳥籠を開くと自ら、気乗りしない様子ではあったけれど入って行った。
 時刻は九時五十分。自分の現在地の詳細は分からないけれど、時間は裕にある。まずは大通りに出て、そこから駅に向かえばいいや。



「やあ、デイジー、久しぶり。」

「久しぶりだね、リー。席なら空いてるよ。」

「おっと、そりゃ助かる。」


 私は、カプリコにトランクを持ち上げてもらって、去年と同様に後ろの方のコンパートメントで膝にカプリコを乗せて座っていた。暇つぶしに狼男との大いなる山歩きを読んでいると四年生のリー・ジョーダンが私のコンパートメントに現れる。彼は、ウィーズリー家の双子と親しい友人で、ホグワーツで行われるクィディッチという競技の実況兼解説者だ。
 ちょうど本は、ロックハートが自分の誕生日の理想的な贈り物を狼男に語っているところで、彼の言う、魔法界と非魔法界のハーモニーが一体何なのか、頭を捻っていたところだった。ホグワーツで授業に使われる教科書はどれも物語調で読みやすい。ただ、暗記するのに向いているかといえばそうではないのだが、繰り返し読んでいれば自然と頭の中に入り込んでくるので悪くないように思う。まあ、彼の本の場合、彼に関する情報が多すぎて嫌気がさしてくるのだが。


「みんなはどうしたんだ?フレッドとジョージの家に行ってたんだろ?」

「まあね。みんなは、昨日までにすっかり荷物の用意を終わらせてなかったみたいでドタバタしてたよ。私が向こうにいる間に二回も戻ってきたから、あともう一回くらいは忘れ物を取りに戻ってるんじゃないかな。」


 二度あることは三度あるっていうし。と九と四分の三番線に辿り着くまでに買った紅茶とドーナツを頬張った。腕時計を見てみると、発車時刻まであと五分もない。それを確認してから、もう来てもおかしくない時間なんだけど…。と眉を顰めると、もう来なきゃヤバい時間だぞ。と窓から顔を出した。


「あっ、今来たみたいだ!」


 こっちだ!早く来いよ!一分もないぞ!走れ!と手を振るリーの脇から外を見ると、燃えるような赤毛がいくつかこちらに向かって来ているのが見えた。パーシー、フレッド、ジョージ、ジニーの順で汽車に乗り込むと、パーシーは他の弟妹とはわかれて、さっさと他の車両へ行ってしまった。


「ママ、学校に着いたら手紙出してもいい?」

「いいわよ。ただ、エロールはもう年だから、パーシーのヘルメスを借りなさいな。」

「ダメだよママ、パーシーは自分のふくろうをこれっぽっちも貸しちゃくれないんだから!」

「お前たちは碌なことをしないからでしょう!」

「あっ、あの!私のカプリコが届けてくれます!」


 汽車の中から顔を出して声を張る。手を振っていると汽笛が鳴った。ゆっくりと風景が動いていく。


「お世話になりました!腕、ちゃんと治ったら、今度はお手伝いしますね!」

「そんなこと、別にいいのよデイジー!体に気をつけて!」


 汽車がぐんぐんとスピードを上げていく。あっという間にロンドンの郊外の風景に変わっていった。
 ほう、と息を吐いて席に着くと、みんなもドサッと腰を下ろす。


「どうしてこんなに遅くなったんだ?」

「高速に乗ってからジニーが日記を忘れたってんで、また取りに戻ったんだよ。」

「わたしだけじゃない。その前にジョージもフレッドも忘れ物を取りに戻ったわ。」


 だから、またって言っただろ?とフレッドは肩を竦める。まあ、それにしてもよく間に合ったね。と苦笑すると、本当にな。とジョージも笑った。結構走ったしな。とフレッドに紅茶を掠め取られる。カップは半分ほどになって返ってきた。


「ところで、ハリーとロンはどこに行ったか知らない?」

「……そう言えば、知らないな。」

「あいつらジニーの後ろを走ってたから。汽車の中から二人が後ろを着いてきたの見ただろう?」


 思わずリーと顔を見合わせ、揃って、見てない。とだけ答える。ジニーも、ママは横にいたし、わたしの後ろから足跡なんて全く聞こえなかった。と目を丸くしていた。なんだって?とジョージが難しい顔をする。それじゃあいつら、乗り遅れたって言うのか?


「ちょっと待って、ホグワーツ行きってこの一本だけなんだよね?」

「そうだと思う。だって、これに乗れなかったら歓迎会にも間に合わないだろ?」

「それは、そうだけど…。」


 とにかく、ロンとハリーがどこにいるのかだけでも確認しなくちゃ。ジョージがそう言うので、鞄から素早くボールペンとメモ帳を取り出す。どこにいるの?とだけ書き込んで、カプリコに紙を渡した。ハリーとロンに。と伝えると、眠たそうに大欠伸をしてから大空へ飛び立つ。


「私、一応車内見てくるよ。」

「いや、その必要はないだろ。俺、二両目からここまで車両の中を通ってきたからな。」

「一両目は見なくていいの?」

「あそこはいつだってスリザリン専用さ。」


 なるほど、それなら確かに確認はほどんどいらないかも。車内にいないってことは、駅にまだいるんだろう。ウィーズリーのおじさまとおばさまと合流できれば、ホグワーツまで送ってもらえるかもしれない。
 でも、なんだって彼らは汽車に乗り遅れるどころか、ホームにすら現れなかったんだろう。
 一人、首を傾げていると、この汽車よりももっと深い赤色が窓の外から戻ってきた。


「なんで書いてあった?」

「えぇっと、……君たちの、五〇〇フィートくらい、…上ぇ?」


 まさか、飛んできてるの?とジニーが呟く。慌てて窓枠に手をかけ、外に首を突き出した。よくわからなかったので、鞄の中の眼鏡を掛け直して目を細める。


「あっ、いた!たぶんあれだ!」


 太陽の光で時々キラキラと光る場所を指していると双子とリーが、どれどれと寄ってきた。後ろを向いてそれを見ていると、何かに気付いたらしいジョージが、危ない!と私の襟首を思い切り引っ張った。窓の外がごうごうと大きな音を立てて暗い繁みの色に変わる。


「び、吃驚した…。」

「ハリー達を心配するのもいいけど、ちゃんと周りを見ないと。」

「……ごめん。」


 視線を落とすと、いや、怒ってるわけじゃないんだけどさ。と彼はしどろもどろになって私の背中を宥めるように叩いた。とにかく、とリーが笑いを堪えたような声で話を切り出す。


「あいつらが空の上にいるんじゃ、俺達にできることはなーんにもない。」

「まあ、そうだな。とりあえずホグワーツに向かえてることはわかったわけだし、特に心配することもないだろ。」


 気楽に行こうぜ。そう言ってフレッドが私の背中を叩いた。先程のジョージとは違って、無遠慮に強く叩いてきたのでゴホゴホと噎せる。一頻り咳をして、それにしたってそんなに強く叩かなくてもいいのに!と糾弾すると、まあまあ。そんなことより眼鏡でも外したら?と彼に指摘され、不貞腐れながらも言う通りにした。
 汽車が茂みを抜け、窓の外では田園風景が延々と続いている。わいわいと普段と変わらず冗談を交わし合う三人にジニーが加わって、コンパートメントはいっぱいいっぱいだった。ふう、と溜息を吐いて、もう一度ボールペンを手に持つ。どうして乗れなかったの?今は箒で飛んでるの?私達、魔法を使っちゃいけないんじゃないの?と走り書きをして、待っているカプリコの嘴に挟んだ。彼は窓から飛び立つと、すぐに高度を上げた。窓枠から身を乗り出して目で追うと、裸眼でギリギリ見えるくらいのところで赤い小さな点が空と似たような色の点に吸い込まれる。数分もしないうちにカプリコはまた手紙を携えて戻ってきた。


 どうして乗れなかったのかはわからないけど、九と四分の三番線の入口が閉じちゃったんだ。おじさんとおばさんが戻ってこれるまでどのくらいわかるかわからなかったし、急げばホグワーツ特急に間に合うからウィーズリーおじさんの車で向かってる。箒には乗ってないよ。ロンが言うには、なんとかの制限に関する第十九条とかなんとかで本当に緊急事態のときは魔法を使ってもいいみたい。

 車!?余計目立つのでは?ていうか、絶対駅で待ってた方が良かったとおもうんだけど。その、なんとかの制限に関するなんとかってやつ、マグルに魔法界のことがバレないようにするためのやつだから……。
 マグルには見られてないですか?絶対見られないようにね。絶対だよ。念のため、先に先生に手紙で伝えておこうか?ホグワーツに着陸するときは場所に気をつけて。個人的にクィディッチの競技場がいいと思う。
 何か欲しいものがあったら言ってね。カプリコに頼んで、そっちに持って行ってもらいます。

 規則のことはわからない。でも、一応僕らも最初は透明ブースターを使ってマグルから見えないように気をつけたよ。途中で調子が悪くなったみたいだから今は雲の上と下を行ったり来たりしてるけど。
 先生には伝えなくていいや。間違ってスネイプやフィルチに知られたら、僕達、それこそ終わっちゃう!
 とりあえず、心配ありがとう。喉がカラカラだから、かぼちゃジュースをくれるとありがたいんだけど……。今は雲の上にいるから、すごく暑いよ。変な形の雲を見るのは楽しかったけど、もう何時間も見てるから嫌になってきた。


 ハリーからかぼちゃジュースの所望が出た途端、カートを引いてるおばちゃんを探しにコンパートメントを出る。急に外へと繰り出した私をみんなが訝しげな目で見ていた。すると、急にガタンと音がして(おそらく、レールとレールの繋ぎ目が普通よりも広く空いていたのだろう)、私の体が右側へ傾く。右肘に強い衝撃が来るだろうと覚悟を決めてギュッと目を瞑った。しかし、私の体は予想に反して急な方向転換をして、ドサッと何か少し弾力のあるものの上に転がっただけだった。目を開けるとフレッドが、間に合った。とニコニコ笑っている。


「あ、ありがと。」

「ホント、相変わらず鈍臭いなあ。」

「違う、今のは不意打ちだったから…!」

「はいはい。」


 フレッドは仕方ないなというように返し、それより、どこ行くつもりだったの?と少し見透かしたような顔をして尋ねた。私が、かぼちゃジュース、買いに。ハリーとロンがほしがってるから。と答えると、その片方だけで?と首を傾げた。あ、とマヌケな声をあげる。そう言えば、そうだった。


「まあいいや、ついでに俺の百味ビーンズとドルーブルの風船ガムも買ってきて。」

「私片手しか使えないってあなたさっき自分で言いましたよね?」

「安心しろよ。ジョージがフィフィ・フィズビー買いに行くついでについてってくれるってさ。」


 は?と後ろで驚く声が上がる。私が振り向くと同時にフレッドはジョージの頭を左腕で抱え込み、押さえつけていた。なあ、ジョージ行きたいだろ?と言いながら、コソコソと彼に耳打ちしている。その間、リーとジニーは私に、これ買ってきてだとか、あれが欲しいだとか割と多めの要求をしてきた。
 ちょっと待って、魔女鍋スポンジケーキが三つで杖型甘草飴が一つ……などと二人に確認を取っていると、行こう。とジョージに腕を引かれる。蛙チョコって五つで良かったっけ?と少し大きな声で尋ねると、何でもいい!と二人とも満面の笑みで叫んだ。何でもいいってなんなの。
 じゃあどうしようかな、と悶々と考えながら視線を上げる。私の腕を引いたままのジョージの後ろ姿が目に入った。何かがいつもと違う気がして、首を傾げる。


「あれ?ジョージ、耳すごく赤いけどどうかしたの?」

「えっ?な…っ、え、耳?」


 私に指摘されると、彼はもっと耳を赤くして(むしろ顔まで赤くなっていた)、バチンと片手で耳を押さえた。私が不思議そうにしていると、ジョージはちょっと目を泳がせてから耳に当てていた手を口に移動させて、少しばかり考え込む。


「そんな赤い?」

「うん。ロンが恥ずかしさで逆ギレしてるときと同じくらいね。フレッドに何か言われたの?弱味でも握られた?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど…………その、えっと、まあ、そんな感じ。」


 モゴモゴと歯切れ悪く答えるので、よくわかんないけど、大変そうだね。と当たり障りなく返して、この話題を切り上げた。双子でもやっぱりそういうことってあるものなんだな、と思ったけれど、ダドリーと私の方がよっぽどひどかったので、まあそんなもんか、と息を吐く。


「あ、おばちゃん。百味ビーンズってまだある?」

「あるよ。いくつほしいの?」

「一つでいいや。」


 汽車の真ん中まで行ったところで、車内販売のおばさんとかち合った。ジョージが次々と注文していると(なんと彼はリーやジニーの注文までちゃんと全て把握していた!)、おばさんは少し背伸びをして私の方まで覗き込む。一体何なんだろうと首を傾げると、彼女は、手を繋いだままでちゃんと持てる?とニンマリした。確かに。自分の左手を凝視していたら、パッと手を離された。


「これは、ちょっと、忘れてて…!」

「あらあら、いいのよ別に。ちょっと待ってて頂戴。袋にいれるから。」


 おばさんはいそいそとジョージの注文した百味ビーンズ、ドルーブルの風船ガム、フィフィ・フィズビー、魔女鍋スポンジケーキ、蛙チョコ、杖型甘草飴にかぼちゃパイをビニル袋に詰め出す。その間、ジョージは息を整えるように深呼吸を繰り返してから頭を掻き毟っていた。普段、フレッドやリーと一緒になっていたずらをしたり、冗談の過ぎるフレッドを冷静に窘めたりするところばかりを見てるから、なんだか物珍しい。面白いものを見たものだ。
 はいどうぞ。とおばさんに差し出された袋を受け取ろうと左手を差し出す。すると、それよりも少しだけ早くジョージが受け取って手首にかけ、さらにかぼちゃジュースを両手に持った。


「袋くらい持てるってば。」

「いいんだよ、持たなくて。また汽車が揺れたら俺はなんとかなるけど、デイジーは違うだろ?鈍臭いから。」

「鈍臭いは余計!」


 あーもう私が来た意味全然ないじゃん。と口を尖らせると、フレッドだって俺がこうするのをわかってて言ってるんだ。と笑った。それに、デイジーが呼ばなきゃカプリコが来てくれないし。とかぼちゃジュースを片手に持ち直して通路の窓を開ける。私がちょっとだけ身を乗り出して、チチッと舌呼をすると何秒かして赤い彼が窓の真ん前に現れた。片足に一つずつカップを渡して、またよろしくね。と言うと徐々に汽車から離れて車の方へと向かった。


「休暇中、何回もフレッドと試したけど、全然来なかったな。」

「そんなもんなのかな。」

「ああ。普通に触らしてはくれるけど、遠くにいるときは呼んでもわざわざこっちに来たりはしないよ。そもそも飼育には向いてないし。」

「あ、それ去年初めてハーマイオニーにあったときにも言われた。」

「不死鳥が人に慣れないのは昔から有名な話さ。数が少ないってのもあるけどね。」


 ガラリとコンパートメントのドアを開けて、買ってきたぞ。とすでにローブに着替えたらしいフレッドに袋を投げて寄越す。フレッドはそれをパッと片手で受け取ると、おい聞いたかよ。と言いながらビーンズと風船ガムだけを取り出して、袋をジニーの方へ渡した。


「あいつら、箒かなんかでホグワーツ向かってるかと思ったら、パパの車で来てるらしい!」

「マジかよ?」

「大マジさ!」


 私にとってはすでにわかりきったことだったけれど、よく考えればハリーとロンが車で向かっていることをみんなには言っていなかったんだっけ。なんでそんなこと、知ってるの?とこっそりジニーに尋ねると、夕刊予言者新聞に載ってたのよ。と顰めっ面で答えた。リーにさっき届いたの。とジニーが視線を動かした方向を見るとすっかり興奮したリーが新聞を握っている。一言断って見せてもらうと一面に“空飛ぶフォード・アングリア、いかぶるマグル”という見出しがでかでかと載っていた。


「見られてるじゃん!」

「あいつら運がないな。」

「確か二人とも何回も車飛ばしてるって俺に言ってなかったっけ?こういうことって起きたことないの?」

「少なくとも俺らはないな。」

「一回もね。」

「ロンのヤツ、俺たちのこと呼び戻してくれりゃよかったのに。」


 フレッドがケラケラ笑う中、私は額に手を当てて座席に座り込む。ロンはともかく、ハリーはドビーの件で一度魔法省から未成年の魔法使用で一回警告を受けてるのに、どうなるんだろう。ましてや、おじさまが作った法律をおじさま自身が穴をぬって魔法をかけた車だ。怒られないはずがない。やっぱり、先に先生に手紙を書いておけばよかったのかも。頭が痛い。
 頭を押さえながら、ぐるぐると考えて立ち上がる。どうしたんだ?と双子とリーから声が上がったので、暗くなって来たし、そろそろローブ着ようと思って。とトランクから真っ黒なローブを引っ張り出した。俺も着替えなくちゃ。とジョージが急いでコンパートメントを出て行く。空はもうすっかり暗くなっていて、星が瞬いていた。十五分もしないうちにホグワーツに着くだろう。


「難しい顔してどうしたんだ?」

「ジョージとなんかあった?なあ?」

「はあ?リー、何言ってんの?」

「そ、そんな怖い顔しなくてもいいだろ?」

「怖い顔もしたくなるよ、ハリー達にマグルには見つからないようにって念押ししたのに……最悪。」

「手紙書いてるときに?」

「そう。」

「まあ、別にデイジーが気にすることじゃないだろ。お前が止めたって、あいつらは車を飛ばしただろうよ。」

「そうだぜ、気にするだけ無駄だ。フレッドとジョージほどじゃないけど、特にハリーなんかは結構無茶するしな。クィディッチのプレイ見ててもそうだろ?」

「しかも、ロンに至っては先のことなんか、なーんにも考えてないだけよ。」

「そうだけど。そうなんだけどさあ…。」


 頭をコンパートメントの扉に預けると、ガタンゴトンという音に合わせて頭が弾んで地味に痛い。あと五分で着くとアナウンスが流れて、暫くしてジョージは戻ってきた。扉に頭を傾けて落ち込んでいる私を見て、どうしたんだ?とフレッドに尋ねる。


「デイジー、ハリーとロンがパパの車飛ばして見つかったから、止めればよかったって後悔してるのさ。」

「二人が言うこと聞くとは思えないけど。」

「俺達もそれ言った。」


 フレッドとリーが口を揃えて言ったとき、速度を落としていた汽車がゆっくりと止まった。外で去年と同じ大きくて太い声が、イッチ年生はこっち!と叫んでいる。カプリコを大急ぎで呼び戻して籠に入ってもらう。ホグワーツ特急を降りながら、ハグリッドの方へ小走りで向かうジニーに手を振った。


「あのね、別に注意したってしなくったって、二人はかわらなかったんだろうけど、でも、だからって見逃しちゃったのは、おじさまに恩を仇で返してるっていうか、よくないと思うわけ。」

「確かにパパは上からの説教は免れないだろうな。でもまあそれだけだろ。」

「うちはうちで何とかするさ、ママがね。」

「それに、スネイプは置いといて、ダンブルドアが二人を退校にすると思うか?……マクゴナガルはわかんないけど。」


 ジョージの言葉に悶々と頭を悩ませていると、翼の生えた黒い天馬が馬車を引いてやってくる。散々悩んで、それはないと思う。と答えながら二、三度その青毛を愛撫した。ジョージは、だろ?と言って馬車に乗り込む。フレッドが、何してんだよ、早く乗れよ。と急かすので、彼らの後に続いて私も馬車に上がった。リーと向かいの座席に腰を落ち着けてパタンと内側から馬車の扉を閉め、掛け金をかけると馬車が進み始める。どうやら、二年生以上はいつも馬車で移動するらしい。


「デイジーのさ、そういう、いい意味で生真面目みたいなところは悪くはないけど、いつまでーもクヨクヨしたって今更無駄だろ。」

「そうだぜ。パースみたいに真面目過ぎないところは俺達気に入ってるんだから。なあ、リー。」

「いや、俺達が気に入ってるかどうかは今は関係ないだろ。」

「とにかく、本当にヤバい時はダンブルドアが怒るから大丈夫だと思うけどな。あの人の千里眼、知ってるだろ?今回のことだってきっとお見通しさ。」

「安心しろよ、ダンブルドアの怒ったところなんて俺達でさえ見た試しがない。」

「なんだろ、この言い得ない説得力。」


 だろ?とフレッドが誇らしげに言うので、一瞬物凄く馬鹿馬鹿しく感じた。しかし、それでもやっぱり悩むものは悩むので、バチンと両頬を叩く。私と一緒に座っている三人ともが何事かと目を丸くした。


「え、何?ご乱心?」

「決めた!」

「何を?」

「とりあえず、二人に会うまでは何も考えない!心を無にする!」

「会うまではって、会ったらどうすんの?」

「へこんでたら謝る。」


 馬車が止まったので、段差を降りながら、自慢げだったらシバく。と続ける。落差すげえ。と笑いを堪えるリーに、だって、どれだけの人に迷惑かけたかくらいは自覚してくれないと。と言いながら玄関ホールを抜け、大広間への扉をくぐった。四つの長いテーブルに金銀の丁寧に磨かれた食器が並んでいるのは何とも懐かしい光景である。
 グリフィンドールの、つまり扉から見て一番右のテーブルに向っていると、何だかたくさんの視線が私に向いているのがわかった。気のせいじゃない。ぼーっと席を見回しているはずなのに色んな人と目が合うのだ。おかしいな。私はあんまり目を惹くような見た目ではないし、有名というわけでもない。そういうのはいつだってハリーの役目だ。なんだか落ち着かなくて、人の少ない真ん中よりも少し前の方の席に座った。向かいにリーとジョージが、隣にフレッドが着席する。左側にはシェーマス・フィネガンが先に座っていて、人懐こそうな顔を綻ばせた。


「久しぶり、デイジー。」

「久しぶり。どうしたの?そんな笑顔で。」

「夕刊預言者新聞さ。」

「ああ、それか。」


 私が呆れた顔をすると、本当なの?と声を潜めた。みんな、それが気になって私を見ていたようだ。後ろの扉からぞろぞろと一年生達が一列でやってくるのに目をやりながら、本当。と私も小さな声で返すと再びひそひそとうるさくなる。シェーマスがいくら声を潜めたといっても、周りも静かに聞き耳を立てていたのであまり意味がないのだ。新聞に載ってしまった今、隠すつもりは全くないからいいんだけど。
 マクゴナガル先生が生徒の名前を呼び出し、今年の組分けが始まった。しかし、私が噂を肯定したのを契機に、シェーマスの隣のネビル・ロングボトムや、さらにその奥のディーン・トーマスが興奮してしまったらしい。大事な儀式を行っているというのに次々と質問を投げかけてくる。どうして特急に乗らなかったの?どうやってマグルの車を飛ばしたの?車はどうやって手に入れたの?三人だけならまだしも、次から次へと学年を越えて顔を覗かせてくるのだから嫌になる。きっと聞き耳を立てているのはグリフィンドール生だけじゃないんだろう。ああ、もう、このことは考えないって決めたのに!
 知らないと言っても聞き入れてくれないので、とうとう不快感を露わに、だから知らないってば。と眉間に皺を寄せると、彼らは唇を尖らせたもののすんなりと同意してくれた。
 組分けが終わった後は、去年同じようにダンブルドア先生が二言、三言話してから食事となり、みんなが満腹になったころに今年度の禁止事項と新しい先生の紹介が始まる。ロックハートが前に出るだけで十数人の女子生徒が気絶を起こして、ロックハートの笑みがさらに深まっていたのを私は見逃さなかった。それから、思い思いのリズムで校歌を歌って解散だ。五年の監督生に連れられて一年生が大広間から出て行く。
 ご飯もいっぱい食べたし、シャワー浴びて寝るかー。なんて、欠伸をしながらうんと背伸びをしているとフレッドがポンポンと肩を叩いた。振り向いて怪訝な顔をすると親指で後ろを指差す。ハーマイオニーが難しい顔をして私を人差し指で呼んでいた。
 みんなにバイバイをしてから、そちらへ小走りで向かう。


「久しぶり、どうしたの?」

「久しぶりね。二人はどうしたの?」

「二人?」

「ハリーとロンよ。バカみたいな噂が流れてるから気になったの。」

「みんな興味津々だよ。」


 ロンの家を出る時からもう別々だったから詳しくは知らない。と先手を打つと、ハーマイオニーはそれっきり二人のことには触れなくなった。その代わりに、そう言えば休み中何をしてたのか、結局何故腕を怪我したのか、どうしてハリーは手紙を横してくれなかったのか等と尋ねられる。答えにくい質問だ。動く階段を登りながら、うーん、と唸った。


「休み中は結構色々あったよ。ダドリーと喧嘩して、腕は折っちゃって、その後また色々あって家出したの。」

「家出って……お父様とお母様が心配なさるんじゃない?」

「いいのいいの。私、双子の兄がいるから、パパもママもそっちにつきっきりだもん。あっちが一番で、私が二番。昔からそうだから、今更心配とか、そういうのはないよ。」

「わたしは一人っ子だからわからないけど、兄弟がいるとそういう感じなの?」

「どうだろ、個人差はあると思うけど。
あ、そうそう。で、そしたらフレッドとジョージとロンがハリーを連れて車で私を迎えに来て回収されて、暫く隠れ穴で過ごしたよ。それから、ほら、ダイアゴン横丁にいた体格のいいおじさんとほっそりしたおばさんいたでしょ?私を昔から知ってる人で、その人の家にちょっと行った。」


 あの人の家、たくさん動物がいるんだよ。羊とか犬とか、リスもいるし馬も鳥もいる。軍人さんでね、近くにある山でよくシゴかれた。そう左手で頬を掻くと、デイジーは動物が好きよね。とクスクス笑われる。思ったよりも元気そうでよかった。この間、あった時は少し萎んで見えたから。と彼女は微笑む。


「あれ?あそこにいるの、ハリーじゃない?ロンも、うわっ!」


 淡い桃色のドレスを纏った太った婦人の肖像画の前で赤毛と黒髪が所在無さげにうろうろしているのを指差した。すると、ハーマイオニーはものすごい勢いで走って行く。やっと見つけた!一体どこに行ってたの?バカバカしい噂が流れて、と声もどことなくイライラしているようだった。


「誰かが言ってたけど、あなた達が空飛ぶ車で墜落して退校処分になったって。」

「ウン、退校処分にはならなかった。」

「…まさか、ほんとに空を飛んでここに来たの?」


 ハーマイオニーの眉が釣り上がるのがわかって、ロンが、お説教はやめろよ。新しい合言葉、教えてくれよ。とイライラしながら言った。ハーマイオニーは、ミミダレミツスイ(ワトルバード)よ。と合言葉を教え、でも話をそらさないで。と再び食ってかかる。けれど、太った婦人が扉を開けると、グリフィンドールの談話室からのワッという拍手と歓声でかき消された。
 みんな、二人のことを英雄か何かだと思ってるらしい。入口から何本も腕が伸びてきて、ハリーとロンを部屋へと引き入れる。私とハーマイオニーがそのあとをついて穴へとよじ登る頃には、二人はたくさんの人に囲まれていた。リーは、二人に感動的だと褒め称えていたし、あまり話したことのない五年生にはよくやったと二人の肩を叩いていた。フレッドとジョージだって、自分達も一緒に現場に居たかったと言わんばかりの言葉を送っていた。二人は、一応はきまり悪そうにしているものの、笑いを隠せないでいるようで口の端がヒクヒクしている。
 よくない。実によくない。さっきまでの心配が嘘のように苛立ちに変わる。私にだって、ちゃんと止めなかったって責任はあるけれど、それに二人にだって九と四分の三番線のホームに入れなかったという事情はあるけれど、悪いことをしたのだ。暴れ柳とか、見られたとか、そういうのはいい。よくないけど、他の人がきっとフォローしてくれる。でも、車はウィーズリーおじさまのもので、魔法製品として使わないことを前提にマグル製品に魔法をかけたのだ。それを二人はマグルの目の前で使った。そういうのを全部ちゃんとわかっているのだろうか?
 ハリーとロンを見て、私と同じように顰めっ面をしているハーマイオニーに、私、先に寝る。とぶっきらぼうに伝えた。一度、寝て、冷静になろう。落ち着いてから考えた方がよっぽど生産的だ。明日は朝早くに起きて、向こうから持ってきた馬具をヒッポグリフにつけて試してみようかな。ハグリッドには先に言ってあるし、片手で出来ればいいんだけど。誰が一番で大人しかったかなあ。




デイジーは本当はハッフルパフ向き。公明正大。
20140915
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -