210000HITと称した復活祭\(^O^)/ | ナノ

※いつもどおり折原がアホ。


「呼べ。」

「無理。」

「呼んでったら!」

「私には荷が重すぎますってば!」


一月の第二月曜日の朝のことである。昨年の春、なまえちゃんは二十歳の誕生日を迎えて、めでたく広く一般的に言う“成人”となり、今年の成人式にもちろん参加するらしい。そんな彼女は今、韓紅の、他の子が身に纏うそれよりも少し落ち着いた柄の振袖を来て、化粧なんかもしちゃって、波江にしてもらったのかは知らないが、二年前より随分長くなった髪を一つにして高くあげていた。何と言うか、大人になったものである。前々から色気だなんだと言うものはあったけれど、このところ、それらも増した気がしてならなかった。あともう三ヶ月もしたら、彼女と会って三年目になるわけだから当然と言っちゃ当然だけれど、こちらとしては気が気でない。何故かと問われれば、もちろん彼女に手を出す人間がちらほらいるからだ。やっと生きることから逃げ出すのを止めさせることができたのは俺の苦労の末の話であって、彼らではないのだ。つまり、横取りとは何様だと俺は言いたい。彼女を理解した上で愛を囁くのならまだいいとして、彼らの場合、そうでないのだから許せない、というか本当に面白くない。俺を含め、人間というのは常に優劣で序列を決めたがり、自らを特別視したがる生物であるから、なまえちゃんに関して俺が優越を感じようとするのも、俺個人が彼女にとって特別だと思おうとするのも仕方のないことなのだと思っておこう。そもそも、これはなまえちゃん自身も認める事実だ。何も問題はない。


「荷が重すぎるっておかしいだろ。名前呼ぶだけだよ?いつも呼んでる折原さんっていうのを臨也に変えるだけじゃない。六文字から三文字になるんだから、よっぽど簡単だと思うけど?」


だから、彼女が平和島静雄を静雄さんと呼ぶのに対して、俺を折原さんと呼ぶことに俺が不満を持つのは至極当たり前のことだと思うのだ。一番腹が立ったのがシズちゃんって話なだけで、何も下の名前で呼ぶのはシズちゃんに限った話じゃない。波江も、九瑠璃も、舞流も、帝人くんも、紀田くんも、沙樹ちゃんも、いつどこで会ったか知らない青葉くんも、ドタチンも、セルティも、今となっては新羅も岸谷先生から新羅先生に昇格だし、狩沢と遊馬崎に至ってはあだ名で呼ぶ仲だ。おかしいだろ。しかも、未だに敬語抜けきれないしね。どうしてこうなった。その辺に関しては波江も意見を同じくしているようで、なまえちゃんが助けを求める視線を投げ掛けても、名前ぐらい言えば。減るもんじゃないし、そいつ、仕事しないし。と見向きもしないで言い放った。興味は微塵もないらしい。


「むりですって!今更すぎて改めて言われると、は、はずかしいし、ほら、私達一応上司と部下!」

「俺と波江さんは呼び捨てだよ?しかもタメ口。ほら、男女平等の時代だし。ねー、波江。」

「あなたに親しみを込めて話されても何も嬉しくないわ。」

「じゃあ私汐達と待ち合わせてるんで行きますね。」


そう早口で言って隙を見て逃げ出そうとする彼女の腕を掴んで引き止める。おい。と、少し苛立ちを顕にすれば(もちろん“ふり”だ)、どうやらなまえちゃんは観念したらしい。視線を落として目を泳がした。


「…い、」

「い?」

「いざや……おりはら、さん。」

「外国人じゃん。」

「だからむりだってばあ!」

「今からそれでどうするの。」

「どうするもこうするも何の問題もないでしょう。」

「じゃあ何?折原なまえになっても折原さんって呼ぶんだ?」

「はい!……………はい?」

「じゃああれか、もし子供が出来て、生まれても俺は一生なまえちゃんに苗字にさん付けで呼ばれることしかなく、親を真似して生き抜くことを覚える実の娘息子にすら折原さんと呼ばれ、死ぬまで他人行儀な扱いしかされないってこと?」


ねえ、それはちょっとひどいと思わない?と彼女にしなだれかかると、体重を支えきれなかったなまえちゃんは壁に背を預ける。彼女は俺の言葉で、勝手に想像して、勝手に同情して、勝手に赤面して、勝手に困惑しているようだった。本当に、堪んない、なあ。食べてしまいたいくらいだ。とうとう我慢がならなくなって、俺は目の前の彼女の耳に優しく歯を突き立てた。それから顔中に唇を落とす。狼の群れに羊を送り込む、とはよく言ったもので、彼女は真っ赤になって瞼をぎゅうぎゅう瞑り、子羊のように身を強張らせていた。


「お、おりはらさん、なんか、」

「臨也。」

「…せめて折衷案で奈倉さんに、」

「より名前から遠退いてどうする。」


次、余計なこと言ったら襲っちゃうかも。とほのめかせば、い、いざや……さん、止してください!と自棄になって口にした。思ったよりもずっと嬉しくて、それがさっきよりも余計に紅潮した頬で、瞳に涙まで浮かべちゃって言うもんだから、なんだか嬉しいのと興奮したのがない交ぜになってしまったらしくて、今度は思わず唇に噛み付いた。






なまえちゃん遅刻のお知らせ。
折原さんは波江さんがいようがいまいが関係ありません。波江さんは折原さんがいようがいまいが興味ありません。ある種の鬼畜。
最後gdgdしてしまいましたが、乙女フィルターで補正をかけてくださると助かります!それでも補正仕切れないときは書き直します、同じネタだけれども←
流兎さん、いつも応援ありがとうございます!リクエストありがとうございました!
20120121