こぼれた後で




お気に入りの木の上でまどろんでいたら、下から何かが聞こえてきた。

「やめてよ!」
「やめない!」

どうやらまたぞろは組の連中のようだ、と内心わくわくしながら首を伸ばすと、しんべえと、しんべえと同じ用具委員会の子供と、同級生の竹谷が所属する生物委員会の子供がお互いに涙目になりながら対峙している。
一拍遅れて三治郎と喜三太という名前が出てきたが、まぁそれはどうでもいい。

「別にいいじゃない!五年長屋ふっとばすカラクリは、しんべえたちが危ないわけじゃないんだから!」
「でも火薬を使うカラクリは僕達にはまだ早いよお」
「喜三太の言うとおり!危ないよ!」
「だから用具委員会にお手伝い頼んだんでしょ!」

もういいもん一人でつくるもん!と啖呵を切ってくるりと踵を返した三治郎の前に、するりと立ちはだかる。ちなみに顔は伝子さんにしてみた。全身を総毛だたせて固まった彼らに気をよくして、私は三治郎に顔を近づけた。

「話は聞かせてもらった。しんべえ達は何も作るなって言ってるんじゃない。もっと安全な形にしろって言ってるんだよ。なんでかわかるか?」

首を捻ると、三治郎はふるふる首を振った。

「友達が無茶して怪我するのは嫌だからだ」

いい友達じゃないか、と三治郎の頭にぽんと手を置くと、火がついたように子供は泣き出した。つられて泣き出すしんべえ達を、いつぞや先生が私達にしてくれたように抱きとめて、背中をぽんと叩いた。
全員擦り傷や青あざだらけで泣きじゃくりながら仲直りをしたっけ。

「で、どんなもん作るんだ?」

お兄さんが手伝ってやろうじゃないか、というと、後輩達は瞳を輝かせた。
さて、完成の暁の同級生達の表情が楽しみになってきた。






(鉢屋、夢前、福富、山村)
(初出:2010/11/23 十忍十色伍の巻 無料配布)
(加筆:2010/11/29)









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