背に負う




よくある話なのだけど、と自分自身に前置いて、僕は首を捻った。
数歩先の地面に臥している老人と思しき人物は、僕らがこのまま進めばおそらく、何か厄介事を持ちかけてくるに違いない。
これは忍者の勘とかそんな格好いいものじゃない。
長年この世界で生きていれば必然的に身につく生活の知恵だ。委員会の買出しの帰りとあって荷物も重い。はてどうしようかな、と思考の迷路に迷い込みそうになった瞬間、組んだ腕の袂を引かれた。

「不破先輩、オレ行ってきますよ」

こちらを見上げた摂津のきり丸は、真顔のままで言った。

「こういうの、慣れてますんで」
「慣れてるって…危ないよ、一年生一人じゃ。僕が行くからきり丸が学園までひとっ走りして、誰か呼んできてよ」
「それでもいいっすけど、 そしたらこの本達は捨ててきますよ。体力持たないんで」

この本、ときり丸は背中に背負った大きな風呂敷包みを見せる。僕の背中にはそれよりも二周り大きな包みが背負われていて、確かにこの包みを背負って後二つ峠を越えるのは一年生の足には厳しいだろう。きり丸と、老人を見比べて、思い切りうなった後、僕は息を吐いた。

「一緒に行こう。一人より二人の方が、きっとなんでも上手く行くよ」

きり丸は僕を見つめていたが、不意に意地悪く笑った。

「先輩、お人よしですね」

よく人から言われません?と老人に向き直りながら目を輝かせるきり丸に、ため息交じりに答えた。

「しょっちゅう。…駄目だってわかってるんだけどね」
「いや、いいんじゃないすか」

甘ったるいのも嫌いじゃないですよ。
そう言って老人の下へと急ぐきり丸は、やはり無表情だったけれど。






(不破、摂津の)
(初出:2010/11/23 十忍十色伍の巻 無料配布)
(加筆:2010/11/29)









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