※捏造注意
「イヴ、どうしたの?早く手を…っ!」
あなたの声は聞こえない。
「イヴ!イヴ!」
なぜなら、
「……………………ッ!!」
もうイヴは、ゲルテナの世界に取り込まれているから。
???の世界というタイトルの絵画を眺めていた際、ギャリーはひとりでにその絵画に飛び込んでしまった。すると、もう一人のギャリーがイヴの横から現れ、イヴ探したのよ‥心配したんだからね!と駆け寄ってきた。イヴは混乱した。絵画に飛び込み、手を差し伸べてくるギャリー。そして、それは偽者よ、こっちにきなさいイヴ、と言うギャリーのどちらが本物なのか。
「わたしはー‥、」
混乱状態が頂点にまで達し、手に汗を握り息が荒くなる。何を信じたらいいのか、どうしたらいいのか、いまのイヴにはなにも考え出せず、気持ちの整理がつかない。
「ねぇイヴ…」
すると、横から現れたもう一人のギャリーがイヴと目線を合わすためしゃがみ、いつも手を引っ張り、導いてくれた大きな手がイヴの頭を優しく撫でた。
「私がイヴを置いて一人でどこかに行くわけないじゃない。」
ギャリーがそう言うと、イヴは目を見開き、今までのことを思い出した。そうだ、ギャリーはいつも私を心配してくれていた。どんなときも、お互い励まし合い一緒に頑張った。
「絵画に飛び込んでいったのは偽者よ。」
ギャリーは絵画に向かって吐き捨てるように言い放った。絵画の中に入っていったギャリーは、相変わらず「イヴ!早く手を伸ばして」と焦りながらイヴの手を掴もうとする。しかし、絵画の中からでは決して届かない距離だった。届くとしたら、イヴが自らの手を伸ばしさえすれば、ギャリーは容易く掴めるであろう。
「私はいつでも、イヴの味方よ。」
だから、イヴ‥私と一緒に行きましょう。
ギャリーは異様な雰囲気を醸し出していたが、その言葉がスッとイヴの身体中を駆け巡り、イヴは忠誠を誓うかのように右手を差し伸べた。ギャリーはイヴのその様子をみて、満足げに微笑んだ後、イヴの右手をとり歩き出す。
「イヴ!どこへ行くの?!イヴ…ッ!」
絵画の中に入ってしまったギャリーは必死に呼び止めたが、イヴは迷いなくもう一人のギャリーと共に歩く。
「イヴッ!お願い!目を覚まし――…‥ッ!!」
絵画から強烈な青白い光で溢れ、叫んでいたギャリーはたまらず目をつぶった。やがて、叫び声はだんだん聞こえなくなり、青白い光が消えると同時に、絵画もギャリーも光に包まれ消えていった。
「よかった…イヴが騙されなくて!もう心配したんだから。」
しばらくイヴとギャリーは歩きながらたわいもない話を交え、これからどう脱出するかの案を出し合っていた。出し合う最中に、ギャリーが先ほどイヴが騙されかけた件について話題がとんだ。イヴは申し訳無さそうに俯き、ギャリーと繋いでいる手をキュッと握り返した。かすかに震えている身体をギャリーは見逃さず、安心させるためにイヴを抱き上げた。
「怖かったわね、イヴ。もう大丈夫よ。」
緊張の糸が切れたイヴはギャリーの顔をみた後、瞳にうっすら涙を溜めた。イヴは腕をギャリーの首に回し、抱きつくというより縋るような勢いで距離を寄せる。
「ギャリィ…そばにいて。」
消え入りそうな声でイヴがギャリーの耳元で囁く。ギャリー頷きながら言った。
「えぇ、ずっとそばにいるわ。」
ずっと、ね。
すがりつくイヴを宥め、頭を優しく撫でながら、ギャリーの瞳は狂喜に満ちたりながら口元は歪んでいた。それを知る者は、ギャリー意外、誰も存在しなかった。
END