土曜日はだらだら | ナノ


!年齢操作(20代な二人)


――



土曜日の朝というのは平日と休日が混在するような曖昧でぼんやりとした感覚を抱かせる。身体を包み込むぬくもりに心地よさを感じながらも、今日は土曜日だよな大丈夫だよなと一抹の不安を消化する。大の男が二人してばたばたと走り回って身支度する光景は脳裏に浮かぶだけでぞっとしない。
わずかなカーテンの隙間から覗く外界はすでに活発な明かるさにまで目覚めている。
しかしそれでも、もう少し惰眠を貪っていたいと思ってしまう。が、いかんせん腹が減っていて眠るにはいささか不都合だ。
冷蔵庫の中には何があっただろうかと最近の記憶を辿っていると、シーツをすっぽりかぶったこんもりした塊がもそもそと動く。同時にほどよい圧迫感。そのはっきりとした腕の強さにさきほどから俺を抱き枕にしていた男が起きたのだということを知る。

「…メシ。」

小さいがしっかり発せられた言葉。いっそのこと感動する域だ。起きて早々自分の欲求を唱えるとは。しかしそれができてこそ不動明王という男なのだ。(…か、どうかは定かでない。)

「腹減った。」
「ああ、俺もだ。」
「なんか食わせろ。」
「何が食べたいんだ?」
「…マック。」
「マックは作れないぞ。」
「か、」
「か?」
「マック。」
「行くのか?」
「食わせろ。」
「…買ってくるか?」
「行くんじゃねえ。」

相変わらず理不尽かつ支離滅裂だ。せっかくのshall we?も献身的なデリバリーサービスも断られてしまった俺は一体どうしたら良いというのだ。だがどうかしようにも温かい拘束はますますその強さを増すばかり。困った。何が困ったのかと言うと、単純明快また眠たくなってきた事だ。なにせ天然のホッカイロが身体をぬくめ続けているのだからそれも無理はない。

「明王、マックは起きたらにしよう…。」
「んー…」
「な。」
「んー…」

たいした手応えのない返事ばかりが返ってくる。考えているのかいないのかよくわからない反応だが、明王も眠いんだなと勝手に解釈して早々に眠る体勢になる。
なんといっても今日は土曜日なのだ、二度寝くらいしたってバチは当たらないだろう。積極的に睡魔に身を委ねてしまえば空腹はさほど気にならなくなる。食欲に睡眠欲が勝った瞬間。
おやすみ明王。もしお前が腕まで抱き込めてなかったら頭くらいは撫でてやれたのに。…撫でたら多分怒ったろうけどな。
そんなことを考えながら、うと、うと。
意識は次第に深く深く真っ暗な底へと沈んでいった。


だらだらぐうぐう


(数十分後、「やっぱ腹減ったからマック行くぞ!」という不機嫌な声と共にベッドから蹴落とされたのは、また別の話だ。)


――


名前で呼びあう二人。お互いのことを空気みたいに自然に思ってたらいいなという妄想。年齢操作たのしい。