あまったるい不源 | ナノ


もうどれくらいこうしているのか分からない。優しい体温がゆっくりと髪の上をいったりきたりする。その心地良さについうとうとしてしまうが、寝たら怒られるような気がして重たい瞼をかろうじて持ち上げている。だが思考はあやふやでほとんど意味を成していない。

「不動…、ねむい。」
「起きてろ。」

口を開いて声を逃がすのさえも億劫だったのに、振り絞った抗議は呆気なく却下された。暴君だ、横暴だ…いつもか…。でも、俺は悪くない。ベッドは眠る為の場所だ。それに不動の体温が心地良いのが悪い。ということにしてもいいだろうか…。眠い。

「言ってる傍から寝てんじゃねえよ。」

ふわ、と髪の毛に口付けられた。気がしただけかもしれない。

「いいか、不動。俺は眠いんだ。」

もう自分が何を言っているのかよく分からない。なんとなく八つ当たりの意味も込めて不動をぎゅうぎゅうと抱きしめる。どうだ苦しいだろう。いや、苦しいのは俺の方かもしれない…。なにせ不動の胸に思い切り顔面をおしつけることになるからな。不動はいつもほんのりせっけんのにおいがする。いいおとこだ。じゃなかった…、いいにおいのするおとこだ。

「…いきができない…。」
「なにやってんだテメエ。いつにもまして頭わりいな…。」

頭上でふっと笑った気配がする。とても近くで発せられる声はどこまでも優しい。その上、休むことなく頭をなでつづけられる。こんなにたくさん心地良い要素でいっぱいになってしまったら、もう答えはかんたんだ。ねるにかぎる。ぐりぐりと不動とのきょりをつめて、おちつく体制をとる。不動、なかなかいいかんじだ、おまえはだきまくらのそしつがあるぞ…。

「…おい、幸次郎?…寝たのかよ…。ったく。」

不動、俺はまだねてないぞ、なんとかおきてるぞ。でも、いいたいことがあるなら今のうちに言わないとほんとにねてしまうぞ。なにせお前はだきまくらのそしつだけじゃなくて、まくらのそしつもあるみたいだからな…。そんなお前が、うでまくらなんか…するのがわるいんだ…。

「何寝ながらうれしそうな面してんだよ、ばあか。」


むにゃむにゃすうすう