「人はどのくらい暑いと死ぬんだろうか。」 「そういうこと本気で言うの止めろよな…。」 「何故」 「余計暑くなんだろ。」 「言わなくても暑いものは暑いだろう。」 投げやりに淡と言い置けば、ああ…とだるそうな呻きが返ってきた。ぎらぎらと反射する健康的な緋が眩しい。背中を、つと人差し指でなぞればやはり熱気。 「触るな。」 「何故」 「……。」 返事らしい返事は返ってこなかった。きっと『以下同文。』というようなことなんだろう。節電か。ご苦労なことだ。 「クーラー…つけようぜ。」 「体調不良の私を、君が看病しくれるのならそれでも良い。」 「うぜえ…。」 空調は好かない。 晴矢はうんざりといった様子で黙って目を瞑った。扇風機がかき集めたなけなしの風がその前髪をさらさらと流す。首筋にはべったりと襟足が張り付き、身体にはTシャツの布がしっとりとしている。確かに、暑そうだ。とても健康的に。 そして、艶かしい。 首を降った扇風機と目が合う。ここでたゆんだ「あ」を出したら隣の男はまた怒るだろうか。暑い、と。 それでも、この誘惑を打ち負かしてくれるのなら、私はそんなやりとりを望む。 扇風機の響きは情欲に 勝つか否か サッカー以外で、暑い中汗を流すなんて。 |