惰性の疲れ | ナノ

(20代の二人)





普段は考えもしないことを考えた。


僕は珍しくセンチメンタルな気分だった。
こうして半田とセックスしたって子供が生まれるわけじゃない。(そもそも生まれたら困るし、生まれないからこそ安心して安易にセックスするわけで。)責任が伴わないということが、僕らの行為を軽々しいものにしている。そんな気がしてならない。
僕は面倒ごとが嫌いで、何事も気持ち良ければそれで良い。
いつもだったらそう。

ベッドの上では半田が少しだけ弾んだ呼吸を整えている。俯せになった肩甲骨が浮き出て、その上に程よい筋肉がしっとりと波打っているのはとても気分の良い眺めだ。でも、今はこの眺めすらもなんだか憂鬱。
事後の半田は基本的に淡白で、お喋りがきらい。気力が戻り次第シャワーを浴びて余韻を残さず眠る。
半田の気力ゲージが貯まる前に、重たい唇を開いてつやつやした鉛のような言葉をするりするりと吐き出す。

「僕達の行為には何か意味があるのかな。」
「……ない。」

ひゅうひゅうする喉でぶっきらぼうに言い捨てた彼を、視線で刺した。僕の棘が刺さるのはその犬みたいな茶色い毛の後頭部だけで、本人が気がつく素振りはない。

「僕が真剣に考えてあげてるのに。この僕が、僕のことじゃなくて僕達のことをさ。」
「いまさらだ。」

何故か半田は不機嫌そうな、苛々が過ぎて泣き出しそうな、そんな声を出した。表情は見えない。何がいまさらなのか、僕には全く分からなかった。僕にとっては初めてなのに、半田にとってはそうじゃないんだ。
もしかしたら、彼は一人で何度も考えたのかもしれない。

答えは出たのかな。

そうやって、僕達のことですらなくなって、半田だけのことを考えていると、白い背中が途端に気の毒になって、眼を逸らした。
僕らの表情を知っているのは、向こう側の寡黙な壁だけ。だけどなんとなく、半田も僕と似たような顔なんじゃないかと思った。


ごみ箱の中には冷えきったコンドームが捨てられている。



倦む