背中にじんわりじんわりと広がる湿っぽい温度。悲しみはその広がりを通して伝わってくる。 悲しみ、といってもそれで本当に正しいのかは分からない。涙には悔し涙という種類もあるし、人間とは不思議なもので嬉しい時にも泣く生き物だ。 ただ、源田の場合はしくしく濡れていく背中で悲しみを感じた。 「不動…、」 「…、うるせえ。振り向くんじゃねえよ。」 躊躇いながら名を呼んでも、とりつくしまもなくはね除けられてしまう。だから源田は仕方なく、せめてこれ以上邪魔にならないようにとさまざまな疑問や気持ちを縮こめて、じっと座ることにした。 不動はいつも感情の訳を言わない。もしかしたら言葉以外で不動なりに示しているのかもしれないが、源田は中々それを見つけることが出来ない。今だって、不動が泣いているのが自分に関係あるのかそうでないのかすら分からなくて、もどかしい気持ちでいっぱいだ。 (不動は俺のことを何でも分かっているというのに、俺は…。) 溢れそうな想いを、強くつよく握り締める。 背中からじわじわと悲しみを感じるのは、何も出来ない自分が不甲斐ないからかもしれない。 しずかな涙 |