陽当たりの悪い部屋っつーのは本当に最悪だ。 そんな部屋で冬を過ごすのはもっと最悪で、しかもこのご時世に暖房器具ひとつないってのはもう最低としか言いようがない。 呼吸してるのをいちいち視覚的に知らされるのは鬱陶しいもんだがそれでも室温が室温だからしょうがねえ。 どんなに着込んでも寒い部屋で二人揃って体育座りとはぞっとしねえ光景だ。それでも、暖を逃がさないようにしっかり膝を抱く。ただ、背中だけはぺったりとぬくい。 「お前さあ……、っ。」 ずずっ。 口を開いたら余計なもんが出てきそうになって慌てて鼻を啜った。だから寒すぎんだろこの部屋…。部屋に入る前よりも鼻声になってることがますますうぜえ。 「いい加減暖房入れろよ。」 「何故だ…?」 それはてめえがなんで鼻声かを考えれば分かるだろ…。脱力。はあ、とでっかく溜め息を吐いて背中をぐいぐい押し付ければ薄い筋肉に覆われた背骨が当たる。もうちょい肉つけろよなあ。 「さみいだろ。凍死すんぞ。」 ずずっ。鼻水うぜえ…。 なんでこいつはこんなに飄々としてんだ?身体と心の連携がうまくいってねえにも程があるだろ。 「就寝時にのみ気をつけていれば大丈夫だろう。」 「今時こんな生活してる奴見たことねえよ…。」 「私はわりあい気に入っているから良いんだよ。」 肩口に後頭部をすりすりと擦り付けてくる。神経質に跳ねた髪が首筋や頬なんかにあたってもどかしい。つうか耳ん中入ったきもちわりい。 「それに…こうしてればあたたかいじゃない。」 「…南雲晴矢様々だろ。」 「そうだね。」 「でもてめえの体温は低い。よって俺はさみい。」 これじゃ奪われ損じゃねえかよ…、と鼻をずぴずぴしながらぶつくさ言ってると、背中にすっと冷たさがはしって、耳元には生暖かい感触。 「…。なにしてんだてめえ。」 「何って、魔法だよ魔法。」 「…気持ちわりい。」 でも、あたたかくなっただろう?と楽しげに直接耳に吹き込まれて、心臓がざわざわした。また、背中がぴったり密封される。 「南雲。」 「んだよ…。」 「涼野風介様々だろ。」 「…うるせえ。」 魔法使いのキス |