また半田が泣いている。 なんで泣いてんのかはわかんないけど、この部屋には俺と半田しかいないんだから多分俺が泣かしたんだろう。ひとりで泣いてても気持ち悪いし。無意識に人を泣かせるなんて俺ってすごい。 「なんで泣いてんの。」 画面から眼を逸らさないまま聞いたから、まるでゲーム機と話してるみたいだ。 あっ、しんだ。でもライフはまだある。 「わ、かんないのか…?」 半田は悲しくてかなしくてもう絶望的ですみたいな顔をした。驚きで眼が見開かれて、一際大きな涙の粒がぼろりとこぼれる。泣きながら驚けるなんて器用だなあ。俺には負けるけど。 わかんないのかっていうか、わかんない?俺いまゲームしてんだけど。 いらいらする。またしんだ。 「わかんない。」 「…はあ、…も、俺、かえ、る。」 半田はそばにあったカバンを手早くひっつかんで出口へ向かう。ゲームオーバー?足をひっかけて転ばせた。コンティニュー。 ゲーム機の電源はオフ。 「っに、すんだよ!」 「ごめん。」 「…なにが悪いか、分かったのかよ。」 「わかんない。」 「おまえなあ!」 「俺が謝ってんだから、いいじゃん。」 平凡な顔をじっと見る。しこたまぶつけたらしい額が赤くなっている。目元はもっと赤い。放っておけばどっちも明日には腫れるんだろう。 しばらく気が済まないような顔をしていたけど、俺のことをちゃんと学習している半田は「…しょうがないな。」と小さく呟いた。 「いいこ。」 その茶色い頭を撫でて、軽く口づけてあげると拗ねたような照れてるようなそんな顔をしていた。 明日も半田が半田でいられるように、とりあえず冷やしてやんなきゃね。 ゲームばかりもしてられない |