前戲の最中に、晴矢の青白い肋にそっと舌を這わせてみた。ひくりひくりと動く皮膚、あるいはその下の臓物…は私になんとなく草食動物を連想させた。光をぼうっと反射する薄い腹は、テレビなどではたびたび食いちぎられている。…ハイエナや、ライオンなんかに。 しかも彼からはなんとも言えないような甘いにおいがする。たまらず鼻をすり、とこすりつけると僅かにこちらを睨み付けてきた。一見不機嫌なように見えるけれど、こういう場合におけるこの表情は、快感に耐えている顔だということを、私は知っている。 ―…彼すらも知らない、私だけの楽しみ、だけれど。 目の前の獲物はどうやら食べ頃。 「お前さあ。」 掠れた声はやはり不機嫌そうな響きだ。いつまでたっても事後の雰囲気に慣れないのだ。かわいらしいものだよ、本当に。私は紅蓮を梳く指先を大人しくさせて、その瞳をじっと見つめてやる。 「猫みたいだよな。たまに。」 ねこ、ネコ、猫。 はて…。 それは君の方だ、と言おうとしたけれど、会話が余計な方向に蛇行してしまうだろうから止めておいた。それに倦怠感の残る身体では怒った晴矢の相手をするのも中々大儀だ。 「じゃれてくるだろ。」 恥ずかしいなら言わなければいいのに、どこで羞恥を感じたのか知らないけれどそのようなことを言う。 ああ、なるほど。 文字通り、猫。 合点がいくと同時に、可笑しくてくつりと笑いが込み上げてきた。 「…んだよ。」 「うまくできているね、私たちは。」 「はあ?」 「猫はね、肉食なんだよ。」 でも安心しておくれ、私は君を食いちぎったりしないから。 捕食者の密かな愛情 |