「Oh、あの女の子最高にキュートだぜ!ミーああいう子好き!」 「犬も好きだけど猫も好きさ!」 「Wao!このシェーキの新フレーバー斬新で好きだ!」 「あの映画?エキサイティングで好きだな!」 好き好き好き好き…。 ディラン・キースという人間には、好きなものが沢山ある。と、いうか多すぎると思う。 もちろん、嫌いなものばかりの人間よりも、好きなものばかりの人間の方がはるかに素敵だ。だが、ディランのようにこうも"好き"が沢山だと、その密度を少し疑ってしまいそうになる。 正直にいうと、俺はディランに好きだと言われてしまうのが、怖い。だから今まで一度も俺のことをどう想ってるのか聞いてみたことがない。 告白した時だって、夢みたいだ…。とは言っていたけれど、結局「もちろんOK!さ」と、了承の言葉をもらっただけだ。もし、気持ちを聞いていつものように"好きだ"と軽く言われたら。結局ディランは、そこまで俺のことを想っていないんじゃないかと、ネガティブな方向にいってしまいそうだ。 「Hey、マーク?そんな難しい顔して、どこか調子が悪いのかい?もしどこか痛いのなら、寝てた方がいいぜ。ミーはマークが起きるまで待ってるからさ。」 それまでずっと楽しそうに話していたディランに、突然呼ばれて我に返ると心配そうにこちらを見ていた。 「ああ悪い。大丈夫、元気さ。」 「それならいいけど…。じゃあ、そんな真剣な顔で、なに考えてたんだ?」 アイガード越しでも分かるくらい、じっと見詰めてくるディラン。 彼は基本的に物事をおおらかに捉えるが、一度気になってしまえば納得がいくまで知りたがる。今のディランはまさにそういう状態ってわけだ。 どんなに怖くても、付き合っている以上、そしてこれから付き合っていく以上はいつか聞かなければならないと思っていた。きっと今がそのいつかなんだと腹を決めた俺は、おとなしく降参することにした。 「そうだな…。ちょっとディランに聞きたいことがあるんだ。」 「What?なんだってガンガン聞いてくれよ!マークにだったら全部答えるぜ!」 「いや、なんというかその…少し変な質問なんだが…。」 「なんだよユーにしては珍しく、はっきりしないじゃないか!」 「ああ…、人や動物や食べ物やその他にも、君には好きなものが沢山あるが…、俺のことはどう思っているんだ…?」 覚悟したにも関わらず、どうしてもいたたまれなくなって、最後の方は下を向いてしまった。 恋人同士なのにこんなことを聞くなんて本当におかしな話だ。恐る恐る様子を伺えば、ディランはぽかんとしている。 居心地の悪い沈黙に、やっぱり言わなければよかったと後悔し始めたその時。 「ッハハ、Oh、なんだそんなことか!そうか、ミー言ったことなかったのか…」 突然笑いだして、一人で納得しているディランに、今度は俺がぽかんとする番だ。そのまま彼を見ていると、普段滅多に外さないアイガードをふいに外した。色素の薄い瞳は、部屋の明かりですら眩しそうにしている。 「…っ、ディラン、眼が悪くなるだろ!」 「このくらいはへっちゃらさ!いいかいマーク、ミーの顔をよく見て、よく聞いてくれ。」 いつも明るいディランの真剣な表情に、眼の心配も忘れて俺はきちんと座りなおした。膝の上に揃えた手に、ディランのそれが優しく重ねられる。 「ミーは…、ミーは、マークのこと世界一愛しく思ってるのさ。それこそギンギンにね!」 「いと、しい…」 捉えた言葉の内容を、一瞬遅れて理解する。アイガードなしの最高にかわいらしい笑顔でそう言われて、今まで悩んでいたことやおそれていたことは、全てきれいさっぱり消えていった。 そうか…、この気持ちを表す言葉は、なにも一つだけじゃあなかったんだな。 「ディラン。最高の言葉を、ありがとう。」 言いながら抱き締めれば、「いつも心の中で沢山たくさん想ってるから、もうマークに伝わってる気になってたのさ!」と、ますますかわいらしい言葉を返された。 「そんな君を、俺はずっとずっと愛してるよ。」 「Oh…!マーク、ユーって奴はいちいちかっこよすぎるんだ!」 あわててアイガードをつけるディランの頬は、どう見てもあかい。俺はそんな愛らしい頬に手を添えて、いとしい人へとキスをした。 Yes,I Love You! |