一人ではないということ
※カトル「十天衆との邂逅B」ネタバレ有り
※夢主=団長ポジ
夜空を背景に停泊しているグランサイファー。
ナマエは蒼く輝く短剣、四天刃をかざし、眺めていた。月明かりに照らされたそれは、昼間の空の色とも海の色とも違う幻想的な蒼に輝いていた。
以前と違うのは、この場にビィもルリアもいないこと。
そして、四天刃の名が、「雪」から「蒼天」へとなったこと。無事に水の力を覚醒させることが出来たのだ。
それは本当に喜ばしいことなのは間違いない。
心強い武器になると思ったのも確かだ。
けれど…
ーー恐ろしい力を持つ短剣「四天刃」。それを覚醒に導こうとする使い手ナマエさん……それってつまり、ナマエさんが最強の短剣使いってことになりませんか?
ーーま、まぁ……傍から見りゃそうかもなぁ。
ーーそう!
ーーだからこそ、許せない。
「おい」
『ふわっ!?
ユ、ユーステスか…ビックリした』
「……最近、気が抜けているんじゃないか」
『あはは、そうかも。また後ろとられちゃったし』
「また?」
『あ…』
四天刃を背景に流れていた過去から現実に引き戻した声は、あの夜出会った彼と同じエルーン…ユーステスだった。
何もかもを見透かそうとしていそうなユーステスの目に、気付けばポツリポツリと十天衆の一人、カトルとのことを話していた。
「決闘…」
『うん、約束は、この四天刃が覚醒したら…だから、多分シェロ経由で伝わってるはず』
「その日は近い、ということか」
『…うん』
「…怖いのか?」
『怖い…』
ナマエは確かめるように、噛み締めるように…言葉を繰り返す。
『そうだね。それもあるかな』
思いもよらない返答だったのか、ユーステスの耳が微かにピクリと反応する。
それでも殆どの者が気付かないであろう、小さな反応だった。それなりに一緒に旅をしてきたナマエならば気付けたかもしれないが、今彼女は遠くを見つめている為、その視界は黒と淡い光達だけである。
十天衆…生ける伝説とまで言われている存在。伝説の勇者の一団、恐るべき脅威…彼らを形容する言葉からも、その強さは計り知れない。
一人ひとりがあの七曜の騎士とも並ぶ実力を持っているという。
その一人、カトル。自身を全空で最強の短剣の使い手と称していた。
一瞬だけだが、その強さは分かっている。気配なんて微塵も感じさせないほどに、後ろをとられた。
ーー逃げたらその時点で殺す。この騎空団の連中全員を殺す。
言葉に乗せた殺気は、凄まじいものがあった。
沢山の試練にぶつかった。厄介な星晶獣にも立ち向かった。
それでも…
あの瞬間は、どんな逆境よりも怖かった。
『強さって、何かな…』
ナマエは「強さ」から広がる図を思い浮かべる。
瘴流域を越えたい。その為には空図の欠片が必要で、星晶獣と戦わないといけない。だから強くなる。
仲間達が…否、仲間で無くとも、誰かが傷付くのは見たくない。出来る限り守りたい。だから強くなる。
でも、最強に固執するつもりはない。
なれるならば、最強っていう響きは憧れる。とは言え、絶対だとは思わない。
それは彼も同じかもしれない。事実、名誉に興味はないと言っていた。ただ、それでも…
ーー現代に蘇る「天星器」とその使い手を殺し、ぼく自身が真に最強であると確かめたいのです。
旅をする中で沢山の人達と出会い、時には旅の仲間に加わり、繋がりが広く、大きくなった。
それでも、彼のような人に会ったことがあるだろうか。
「強さ」の意味とは?
私は騎空団の団長。
団長だからこそ、強くないといけないの?
頭が下に下にと落ちていくナマエの頬を、冷たい夜風が撫ぜた。
『ああもう、こんなんじゃまた、後ろを簡単にとられちゃうね』
私の目指す、強さとは何か。
大きな力を手に入れるなら、それに振り回されてはいけない。
でも、焦る必要も無い。ゆっくり確実に。前に夢の中でそう語りかけられた気がする。
今の自分は、未熟で、一人で戦うにはどうしても限度があって…団長だというのに、足が覚束なくなりそうになる。
団長だというのに、プレッシャーに押し潰されそうになる。
団長だと、いうのに…
「任せろ」
『え、』
「ナマエの背はオレが守る。お前はいつも通り、前だけ見据えろ」
『ユーステス…』
強い瞳、強さを帯びた瞳。
真っ直ぐ向けられた眼差しと言葉は、ナマエの中にストンと落ちた。それと同時に緩む口元。
私は騎空団の団長。
団長だからこそ、私の強さは、やっぱり…
一人ではないということ
かな。
(フラメクの雷…)
(くっ、この…また!)
(凄いユーステス!麻痺効果ほぼ百発百中だね!!)
(…フン)
End
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麻痺効果、一回外した以外全部あててくれたユーステスさん。
カトルvsユーステスって、有りじゃないですか?←
2017.7.31
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[ mokuji]
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