01
はい、皆さん今晩は。早速ですが問題です☆
私、みょうじなまえは今現在、どこにいるでしょうか?
@残業のため会社
A残業が終わったため、帰宅途中
B自宅で今日一日の疲れをとっている真っ最中
正解は……
「恨むんなら、親父を恨むんだな」
『……』
『Cどこぞやかの倉庫で、明らかカタギじゃない人達に囲まれている』でした!
「何か言ったらどうだ、ねーちゃん?」
『……』
「ああ、口に紐がまわされて、喋れねぇんだっけ?」
顎をつかまれ、ムリヤリ上を向かされる。
ヤな男。妙にイケメンなのがムカつく。
ジタバタ動いたところで、何の意味もなかった。両足と後ろ手に両手を縄か何かで拘束されていることが分かったくらいだ。
さて、何故私はこんな冷たいコンクリートの床に転がされているのか……
どうやら、金が払えねぇなら、娘は貰ってくぜ!ということらしい。
……そんなの、江戸時代のノリじゃない!
「普通は『中身』の方なのにな」
「ねーちゃんみてーなのは『そのまま』売った方が金になんだよ」
でもまあ、と言いながらなまえを仰向けにする男。
「売る前に、オレが『検査』してやるよ」
先方さんに『不良品』だとか言われたらたまんねーしよ、と男が言ったのを皮切りに、周りにいる男達もケタケタと笑いだした。
男はなまえの上に跨ぐようにして覆いかぶさると、右手でブラウスのボタンに手をかけ、左手はスカートの裾から中へともぐりこませてきた。
身をよじって抵抗してもかなわず、助けを呼ぶことすらできない。
恐怖と悔しさから、目が潤むばかり。
『んっ…』
「……いい顔してんな」
オレのもんにしてぇぐらいだ……といいながら頬を伝う涙を舐めとられる。
ゾワリとした嫌悪感が体中をはしり、背中がのけ反る。
そんななまえの反応を楽しそうに眺めてくるギャラリー。舌なめずりをしている様は、さながら蛇のよう。
一人の男が、銀色に鈍く輝くものを取り出す。
──ナイフだ。
分かった瞬間、更に冷や汗が流れる。
「服、邪魔くさくないッスか?切って取っ払いません?」
ナイフの切っ先が舐められたのとは反対側の頬に宛てがわれる。無機質なその冷たさに恐怖が増す。
「馬鹿かテメェは。『売りモン』に余計なキズがついたらどーすんだよ」
男はナイフを出した下っ端(多分)を怒鳴りつける。その間も手を休めることは一切なかった。大きな手が太股をゆっくりと這う。またゾクリとした一波が体を襲う。
「ヤベェ……こいつ、感度良すぎだろ…」
男は何かを呟くと、難しい顔をした。漸く進行の手が止まったことに、少し安堵するものの、状況は絶望的だと思う。
残業で残っていたのはなまえだけ。もちろん一人暮らし。だから、誰もなまえがこんなところにいることなんて、わかるハズもない。
正義のヒーローなら、すぐに登場してくれるはずなのに!
……なんて一瞬頭を過ぎった思考に笑えてくる。なまえにとっての正義のヒーローだと思っていた彼氏とは、ついこの間別れたばかりだ。
私って、引きずるタイプだったっけ?
「あの薬、持って来いよ」
「なっ、ダメッスよ!」
「そ、そうだぜ!さすがにそれは…」
「んだと、テメェら……オレのゆーことが聞けねーのか?」
男達の口論によって、なまえは現実に引き戻される。
「─チッ……まあいい。楽しもうぜ、ねーちゃん」
気付くと、ブラウスのボタンは胸の辺りまで外され、鎖骨が露わになっていた。スースーと入り込んでくる冷たい風に顔をしかめる。
男が首筋に顔を埋めようとした、その時──
「ぐはぁっ!!」
「何モンだ、テメェ!」
何かが空気を弾くような…縄跳びを想起させるような音が聞こえてきたかと思うと、次々に上がる男の人達の低い唸り声や怒声。
「何事だ!」
「それが、鞭を持った男が……」
「ムチィ…?」
さっきの音は縄跳びではなく、鞭らしい……
響くその音に、何故か恐怖は湧かなくて…
柄にもなく『正義のヒーロー』を求めたから…
だから…──
金髪の王子様が助けてくれるなんて夢を見ちゃったんだ…
涙で霞んだ世界から、なまえは手を離していた
.
[ 3/8 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]