苦い恋だと知ってても(3/3)





時間が止まっているかのように関しられた沈黙は、グレイによって破かれた。






「…それが本当なら、こいつは受け取れない。さっきも言ったが、オレには教師っつー立場が…」

「あたしは、教師のグレイ先生を好きになったんじゃない!」





叫んだルーシィに驚くグレイ。先ほどまで、少しでも音を立てたらいけないとビクビクしていた彼女とは、あまりにかけ離れていたのだ。






「…いつも優しくて、たまに厳しくて、ちょっとヘタレなところもあるように見えて実は結構俺様タイプの…グレイ・フルバスターという一人の男の人を好きになったんです!!」

「ルーシィ…」

「立場とか、わかってます!でも、一度でいいので、立場とか全部抜きにして…ルーシィ・ハートフィリアという一人の女として見てくれませんか?」






強い意志に光る瞳は、ゆらゆらと涙に濡れていた。


その瞳に映る自分を見た瞬間、グレイの中で何かが壊れた。それは、今までずっと、誰に言うでもなく秘めてきた想い。


その想いに突き動かされるように、グレイはルーシィから貰った容器をジッと見つめてから、赤いリボンをゆっくりと解いた。壊れ物を扱うような手付きで行われるそれに、ルーシィは呆気にとられる。

中から一粒トリュフを取り、口に入れる。指に付いたチョコを舐め取る姿がいやに妖艶で…目が合うと、何かまずいものを見たような感覚になったルーシィは、顔を一気に熱くさせた。





「…甘いな…」

「…それでも、甘さ控え目ですよ?」

「そっか…」






グレイは目を細めて笑うと、今度は生チョコを口にした。けれど、完全には入れず、咥えるだけ。グレイがチョコを食べたという事実と、先ほどからのグレイの艶かしい雰囲気に思考もあまり回らないルーシィは見つめることしか出来ない。






「ふっ…んぁ…」

「っ…」





その為、後頭部と腰に手を回されたことに何の抵抗もなく、意図も簡単に唇を奪われた。

薄っすら開いていたルーシィの唇にチョコを押し込む。お互いの舌の熱で生チョコは徐々に溶け、唾液ともとれる水音がピチャピチャと響く。

グレイは貪欲にルーシィの口内を貪るように味わう。舌で歯列をなぞっては、逃げるルーシィの舌を執拗に捕まえ吸い付く。


いつまでもこうしていたい…


ルーシィの頭に過ぎったのは、そんな願望。気付けば、グレイの背に腕をまわし、自らもグレイを求めていた。


しかし、そうは思っても実際に出来るわけがなくて。そっと流れる涙と息遣いで、ルーシィに限界が来ていることにグレイはやっと気付く。

名残惜しそうに啄むようなキスをして離れる。ルーシィの唇には、どちらのものともわからない銀糸と混ざり合うチョコが伝う。それをそっと舐め取ると、グレイはギュッとルーシィを抱きしめた。








「近くにいても近付けない。触れたいのに、なかなか触れられない。…こんなに甘いのは、今だけかもしれないんだぞ?」

「わかってます…でも…」





苦い恋だと知ってても
(やっぱり、大好きだから…)



好きの一言にグレイはルーシィをゆっくり押し倒し、組み敷く。ビターチョコを食べたような表情で、二人は甘いキスを交わした。


End
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一日遅れた…(ー ー;)
書き始めると、意外と長くなってしまった(笑)

苦いバレンタインデーキス

2014.02.15

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