刃先が山姥切を捉える。

躊躇など感じられない…まっすぐ振り上げられる刃に、なまえを抱く腕にまた力が増す。刀を構えようと掴んだ瞬間…



ーー『強制開門!』


「なっ…!?」

「これは!?…くっ!」




なまえを中心に目映い光が放たれる。咄嗟に狭めた視界の隙間に見えたのは、足元に広がる円陣。次の瞬間には、時を越える時と似たような感覚。


光が収束するのを瞼の裏で感じると、ゆっくり目を開ける。




「ここ、は…」

「なまえさま!山姥切国広さま!」




現状を把握する前に、かけられた声に振り向く。




『こん、のすけ…よか…まに、あ…』

「はい、よかったです!ご無事で…生きておられます!お二方とも!なまえさまのおかげです!」

「どういう、ことなんだ?」




走り寄ってきた管狐に、ここが政府管轄下の施設であることを理解する。

よくよく観察して見れば、演練の際に訪れた施設に類似しているところがあった。

俺の疑問にこんのすけが答えようとした、その時。腕の中の重みがグッと増した。それに伴い、ダラリと落ちるなまえの腕。




「なまえ!」

「説明は後程!こちらです、山姥切さま!医療班になまえさまを!」




安堵したことにより、緊張の糸が切れ、気を失ったなまえをこんのすけの言われるがままに運んだ。

とりあえずと、待合室のようなところに通され、なまえの行ったことについて、こんのすけから話を受けた。




あの時、俺の考えていたこと…風呂に入れることと、政府に連絡すべきか…はどうやら独り言として口から外に出ていたようだ。

段々と冷静さを取り戻していた主は、こんのすけに思念を飛ばして連絡をとった。なまえを拘束していたあの鎖が審神者としての力を衰弱させ、行使させないよう妨害していた。それを俺が斬ったことにより可能となった。そこからは当然、時間との勝負。


今更ながらに思うが、確かに最近こんのすけを見ていなかった気がする。基本、こんのすけは政府からの連絡で送られる。その連絡を、審神者によっては書面に切り替えているらしいが、なまえはそもそも、切り替えるのが面倒であることと、書面を無くす可能性も考えて、こんのすけが来る方針になっていた。



あいつに気取られ無いように、ゆっくり自身の霊力回復し、こんのすけからの合図を待つよう指示したのだと。

敵を騙すなら味方から、を推進したのは自分なのだと、こんのすけは申し訳なさそうに言った。




「謝るべきなのは、俺だ」

「な、何を仰いますか!山姥切さまがなまえさまを縛る鎖を断ち切られたおかげで、助けることが出来たのです!」

「……違う…」




あの状況で逃げ道を作るなら、確かに油断させるのがいい。
情けない話ではあるが、俺が平静を保とうとしても、内心焦っている、あの状況だったからこそ、逃げ道が出来たような気がする。


ただ、本当ならば、もっと早く…






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