俺は山姥切国広。

なまえの初期刀で、近侍で、第一部隊の部隊長だった。

ついこの間までは…。




ーー「近侍では、なくなる…?」

ーー「ああ。明日からは俺が近侍であり部隊長だ。」

ーー「俺が写しだから、必要無くなったのか…」

ーー『違う!違うから!』



これ以外に理由が思い浮かばなかった。そう言えばなまえは、言うと思った…と頭を抱えていた。



ーー『近侍と部隊長を兼任すると、練度が上がりやすいでしょ?長谷部はここに来たばかりだし、長谷部は機動が高いから、なるべく早い段階で練度を上げた方がいいって、先輩が教えてくれて…』

ーー「…近侍と部隊長を兼任すると、練度が上がりやすいと知っていたのか?」

ーー『……先輩が教えてくれるまで、知りませんでした』



どうりで、まんば君が飛び抜けて強いかわかったよ!と、カラカラ笑うなまえだが、笑い事じゃない。審神者になって、それなりに経つと言うのに、それでいいのか。



ーー『だから、長谷部の練度が少し上がったら、また頼むから、それまではお休みしてて!』

ーー「………わかった」



また頼む…なら。


少しの間…なら。


そう思っていた。


だが、数ヶ月経とうと、なまえは一向に俺を近侍に戻す気配がない。

というより、なまえの気配が感じられない。


長谷部が近侍についてから、徐々に部屋から出てこなくなった。

今までならば食事を共にしていたが、部屋まで長谷部が運ぶようになった。

出陣や遠征、内番の当番など、すべて長谷部が発表するようになった。

新しい刀が来ても、今までならば、必ず自らが本丸の案内をしていたというのに、挨拶すらせずに、案内も全て長谷部が行った。

鍛刀、刀装、手入れ…全てを式札に霊力を込めたものを使った。当然、札を受け取るのも、使用するのも、全て長谷部。

長谷部以外、誰一人として、部屋に近づけさせないようになった。



そして、なにより…



「山姥切国広」

「……何だ」

「今日は馬番の連中の面倒を見てくれ」

「……わかった」



これから出陣なのだろう。戦装束を纏った長谷部に呼ばれる。


長谷部はいつも、俺を睨みながら、内番ともとれない仕事…というよりも雑事を言いつけるようになった。

隠す気がないのか、どこか恨めしいというような顔で俺を見てくる。


この顔は、初めて会った日から、日に日に冷たさとそれとは真逆の熱い何かが増していた。それは決まって、なまえといる時だった。

今ここになまえはいないのに、何故あんな顔をする…?


立ち去る長谷部の背を、疑問に思いながら見送ることしかできなかった。




[ 1/6 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -