はにかんだ笑顔
春野の『無表情』『ポーカーフェース』は鉄仮面とまで呼ばれるほどになった。
自分から誰かに話し掛けることもなく、やはりただもくもくと読書に勤しむ姿ばかり。
よくよく考えれば分かることだった。
春野は今まで周りにいた女どもと違う。
それに、どこかオレに似てるとも思った。
だからオレは、春野をついつい目で追っていたんだ。
***
正直言って、この日どうして自分はここに来たのか、よく分からない。
しかし、春野を見つけた瞬間、気付けば足が勝手に動いていて…
「いつもそういうの読んでるよな?」
「え?」
「ん?…あ、」
ついでに口まで勝手に動いていた。
「いや、その…」
図書室というのは、静かにして当然。
だから、オレ達以外誰もいないとなると、その静けさはふだんの倍以上だ。
オレの知る限り、春野がこの図書室で借りてくる本は大抵、星座なんかが表紙に描かれていた。
「星とか、好きなのか?」
「…うん、とっても」
そう言って笑った春野に、オレは気付かされた。
はにかんだ笑顔
全然オレなんかと似てやしなかったという事実を。
End
→03に続く
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異常に短い。あれー?
2013.11.09
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