一人でいる少女
ある日、オレのクラスに転校生がやってきた。
「春野サクラさんよ。みんな、仲良くしてあげてね」
「「「はぁ〜い!!」」」
「席はうちはくんの隣ね。うちはくん、教科書、見せてあげてね」
「はい」
隣に座ったそいつは、鞄から筆箱とノートを出す。
周りからは、男女共、いいなぁ〜、という声。何がどういいのか分からない。
***
転校生、春野サクラ。
親の事情で越してきたらしい。
親は医療関係に携わっているらしく、引っ越しは仕方のないことらしい。
誕生日が3月28日。
白玉ぜんざいと梅干しが好きらしい。
因みに、ほぼ全てに“〜らしい”とつくのは、オレが聞いたからではなく、隣のこいつに色んなヤツらが質問攻めした結果聞こえてきたからだ。
「春野さんって、本が好きなの?」
「…うん」
「へぇ、知的ってカンジ!」
「ピンクの髪可愛い!サクラちゃんって呼んでもいい?」
「…うん」
「やったぁ!」
春野は基本、何を言われても、顔色一つ変えなかったし、淡々と返答し相槌を打つ。ポーカーフェースなのか、只の無表情なのか…
静かなヤツだと思ってた。
自分からは話しかけようともせず、ただもくもくと読書に勤しむ。
けれど、その静かさは、時に周りに敵を作るほどでもあった。
「春野さんってさぁ、いっつも1人で本読んでるよね!」
「いい子ちゃんぶってんじゃない?」
「そうかも〜」
「「「きゃははははっ!!!」」」
「……」
転校生へと向けられる視線というものは、一ヶ月がたって、興味から妬みに変わった。
学力もあり、スポーツもそこそこできる。そしてあの、人を惹きつけるような容姿。
凛とした静かさは、どこは鼻に付くとさえ思われたのだろう。
聞こえているはずの暴言ともとれるそれらを、聞き流しているのか。
一定のスピードで、本の頁がめくられてゆく。
「もしかしたら、前の学校でイジメられてたのかもよ?」
「でもさ、人の話無視するようなヤツ、イジメられても、当然じゃない?」
「あはっ、言えてるぅ!」
はぁ?何を言ってんだ、アイツら。
春野は確かにあまり協調性がない…まぁ、オレの言えた義理じゃ無いが…
誰かから話しかけられれば、ぎこちなさはあるものの、全てきちんと答えていた。
流石にカチンときたのだろうか。(オレはきた)
本をパタンと閉じると、春野はスッと立ち上がり、その場を離れた。
本を脇に抱えていくことから、きっと図書室にでも行くのだろうかと考えたところで、はたと気付く。
何でオレ、こんなにも春野のこと、目で追っては考えてんだ?
女子同士の言い合い(実際にしていたわけではないが)に耳を傾けるなんて。発言一つ一つに腹が立つなんて。
これじゃまるで、オレが春野のこと……。
知らず知らずの内に赤く染まっていた顔に気付いた瞬間、思わず俯くことしか出来なかった。
End
→02に続く
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現在放送中の某アニメのパロ。
でも、恋愛研究はしません(笑)
生徒会会計ちゃんのあの性格好きです。守銭奴(笑)
予想以上のシリアスにビックリ←
2013.09.10
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[mokuji]
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