これは愛と知っていながら
※03:偽りの無い性格のサクラSide
サイと私は双子。
そういうと、殆どの人がその事におどろく。
無理もないかな…。私とサイはかなり似ていない。二卵性だからって、ここまで似てないものなのかというほどに。
例えば、私の髪の色は桃色で、瞳の色は翡翠色。なのに、サイは漆黒の髪と瞳。父親も母親もいないから、どっちがどっちに似たのかは、わからないけれど…
それから、今みたいにこうして出歩くとき。私たちは決まってカップルに間違えられる。
そのことが嬉しいなんて…この気持ちを誰かに知られる訳にはいかない。
似ていなくとも、私たちは「キョウダイ」だから。
***
「ごめんね、サイ。こんなことに付き合わせちゃって…」
「別に大丈夫だよ。他でもない姉さんの頼みだから」
私がこうしてサイを誘って出掛けることはよくある。いつも快諾してくれるサイ。いつも一緒にいるのに、休みの日も私に付き合ってくれる。本当は他の友達と遊びたいかもしれない…私なんかよりも他の女の子とだって、出掛けたいのかもしれない。
そう思うと、私は余計にサイの手を離したくなくなる。一分でも一秒でも長く一緒にいたくてたまらない…
この気持ちが、イケナイコトだってわかってる。それでも、サイが他の女の子と話しているのを見るのは辛いし、私だけに笑ってくれるのが嬉しい。
『カップル限定デザートを食べたい』
これが今回の目的。勿論、サイが私をそういう風に見ていないことなんてわかってる。
けれど、今は違う。
今だけは、『恋人』…そう思うと、私の心臓は煩いくらいに反応した。
「ちょっと悪い気がするわね」
「いつも間違えられるくらいだから大丈夫なんて言ったのは、どこの誰?」
「……私、です」
呆れたような感じで意地悪をしてくるけど、何処か穏やかに笑いながら、仕方ないなって目を細めるサイに、ドキッとする。
サイは贔屓目なしにしても、カッコいいと思う。だから、あんな反応は反則だと思うワケで。
「姉さ…サクラはさ、僕のこと、好き?」
「もちろん好きよ?」
「……なら、今はいいんじゃない?好き同士ってことで」
まだ店員さんが近くにいたからか、姉さんとは呼ばずに、名前呼びをしたんだろうけど…
さらりと、ごく自然に呼ばれた自分の名前にとてもドキドキして…
そんなことを考えているなんてサイが知ったら…どう思うのだろう。
失望?
姉のクセにって、冷たく突き放されるのかな…
気持ち悪いって、私を蔑む?
コーヒーを飲みながら、視線はどこか遠くの方へ向けているサイをつい見つめる。
その姿がどうしてもカッコ良く見えるのと同時に、距離を置かれているみたいに思えて…胸がギュッと悲鳴を上げた。
好き同士…サイも私のことを好きだと返してくれたのと同じ。そのことが嬉しい…なのに、自分の持っている好きの気持ちと、サイの持っている好きの気持ちの意味が違うことなんて、考えなくてもわかってる。
サイはきっと、私が言った好きの意味を、弟として慕われていると思っているのだろう。
それにサイも、私のことはただの姉としてしか見ていないことも…全部わかってる。
今直ぐに好きだと伝えたい…けど、関係が…血がそれを許さない。
伝えたところでどうなる?
嫌われて…ただでさえ届かないのに、もっと遠いところに行ってしまう…。そんな気がする。
たとえずっと、この胸に黒い気持ちが渦巻いたり、キリキリと締め付けられ苦しむとしても…私は…
これは愛と知っていながら
(私はウソをつくの。それが、一番傷付かない方法だと信じて…)
End
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切ない両方想い…
2014.08.04
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