この甘さの正体は?





※帝光






『えっと…あった、これか。ふわとろプリン』





友達がよく食べているプリン。本当に美味しいから一度は食べなさい!なんて言われて…滅多に購買部には来ない私が、ここにいるのは偶々だ。

だから、このプリンを買ったのだって、ただの気まぐれ。


けれど、全てはこの気まぐれから始まった…






*******





『おばさん、そのプリンください!』

「はい、よかったね。最後の一つだよ」


『ありがとうございます』





最後の一つ…そう思うと得した気分になるのは私だけだろうか?

ラッキーだったな、と上機嫌で後ろを振り向くと…





『ぅわっ!?』

「……」





何やらどんよりとした、紫原くんがいた。





『む、紫原くん…もしかして、プリンを買いに?』

「……うん」





ジッと私の手におさまるプリンをガン見しているのは、やはりそういうことか…

それにしても、びっくりするぐらい覇気がない…!




『よかったら、これ…』

「え、でもなまえちんが買ったんだよ?」

『えっと、絶対食べたいってわけじゃないし…ただ気分で買っただけだから、いいよ?』





まるでこの世の終わり…みたいな顔をされ、ついプリンを差し出してしまった。

本当にそこまでプリンに執着しているわけではないので、今あげたってかまわない。今度同じものを買えばいいし…

その旨を伝えると、紫原くんはプリンを受け取ってくれた。ふわっと彼のまわりに花が咲いたような気がした。


ペリペリっとフタを開ける。スプーンで一口掬ったところで、紫原くんは止まった。





『…どうしたの?食べないの?』





少しして、そのスプーンは紫原くんの口に…は、いかず、何故か私の前へ。





「なまえちん、あーん」

『え』

「いいから、早く〜』





ずいずい押してくる紫原くんに負けた。仕方無しにそっと口をあけると、スプーンが入ってくる。





「…どう?」

『お、美味しい…かな?』





正直言おう。

味なんて、わからなかった。←

…そりゃ突然、はいあーん、なんて…ただ緊張し過ぎてなのか、そのまま咀嚼すること無く、プリンを飲み込んでしまった。





「じゃあもう一口…」

『でも!』

「あーん…」

『っ、あーん』





曖昧な回答に納得がいかなかったのか、再びプリンを一口掬うと、私の口へ。


…紫原くんよ、私に食レポは無理ですよ…





「美味しい?」

『…うん、美味しい』

「じゃあもう一口…あーん…」





結局、空になるまで紫原くんに食べさせられてしまった。





『…折角紫原くんにあげたのに…』

「いいのー。オレがなまえちんにあーんしたかったんだから」




いや、何でですか。あーんしたいってなに?




『でも…』

「…じゃあちょっと貰うねー」

『え、いやもう空なのに、どうや…』





どうやって?という言葉は、文字通り紫原くんの唇に奪われた。





「うん、うまい。でもやっぱ足りないよねー」





そう言いながら唇を舐める紫原くん。





「今度、オレのためだけにプリン頂戴ー?」




紫原くんは、何事も無かったかのように立ち去った。



この甘さの正体は?

プリンだよ、プリン!プリンの、はず……
End
ーーーーーーー

むっくん初書き…うーん、不燃焼…
エンドといいつつ、続く予定←

2014.09.12

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