その涙は誰のため?
※学パロ 切
「じ、実はだな…その…」
「エルザ、緊張し過ぎだ」
「だがっ、」
「みんな、聞いてくれ。
…オレ達、付き合うことになったんだ」
マジかよー!?
おめでとう!!!
クラスでそんな言葉が飛びかう中、顔を真っ赤にしたエルザに女子連中が質問責め。
男どもはジェラールを小突いたり…
そんな喧騒からほんの少し離れたところで、ルーシィが困ったように笑っているのを、オレは見逃さなかった。
*******
放課後、エルザとジェラールは一緒に教室を出た。
絶対デートだ!と誰かが叫ぶと、クラスのほぼ全員が尾行を開始していた。
部活や委員会のあるヤツ、元々興味のないヤツなんかは不参加。
ここにいるオレとルーシィは、どちらでもないが、不参加だ。
二人して自分の机の上に座る。
なんとも微妙な距離感に、オレ達の心も、こんくらい離れてんじゃと考えて、頭を振った。
「おまえ…行かなくてよかったのか?」
オレは今、ルーシィの気持ちをわかった上で、酷な質問をしている。けど、アイツからルーシィの気持ちを逸らすには、やっぱりアイツにはもう届かないと思わせるしかなくて…
傷付くルーシィを更に傷付けてでしか、オレのもとには来てくれねーから。
「そういうグレイこそ」
「オレはああゆう野暮なコトが出来ねーだけだよ」
「ふふ、優しいじゃない」
「っ」
バカだろ、ルーシィ…
今お前を傷付けてるオレが、優しい?
「…まぁ、あいつらもようやくくっ付いたか!って感じだけどな」
「うん。あたし、二人が幸せそうで、すっごく嬉しいんだ…」
「……ルーシィ…」
廊下側に向けていた視線を、後ろに向ける。
ボーッと窓の外を眺めるルーシィの背中が纏うものは、誰が見たって、喜びなんかではないことくらい容易にわかるだろう。
「本当は、違うんじゃねーのか?」
「何、言って…」
「嬉しいなんて、本気で言ってんのか、それ?」
「……」
「思ってること、全部はいちまえよ」
オレに指摘されると、ビクッとその背中が反応した。
ルーシィの不満だろうが何だろうが、全部オレにぶちまけて欲しい。
「う、嬉しいに決まってるでしょ?大切な人達が結ばれたんだよ?」
例えアイツのことを思って言う言葉でも…
「だって、友達の初恋だよ?相談とかされてて、好きの大きさがどんなものかだって、わかってたし…」
胸に抱える全てのものをさらけ出してくれれば…
「いつも近くにいた、幼馴染にやっと恋人が出来たかって…安心した、くらいだし…」
オレを…オレだけを頼っている錯覚になれると思っていた。
なのに…
「あたしの大好きな二人が、幸せになれると思うと…凄く、凄く嬉しくて…」
…なのに、何でそうはならない?
いや、理由は簡単だ…
ルーシィが…
「大好きな二人の笑顔がたくさん見れたし……ほら、こんなにも涙が出るくらい、あたし幸せだよ?」
「っ」
…こんなにもか弱いのに、強いから。オレがルーシィの頼る対象に入ってねぇから。
やっとオレの方を振り返ったルーシィは、やっぱり困ったようにはにかんでいて…キュッと瞑った瞳から流れ落ちるモノから、目を逸らせなくて…
その涙は誰のため?
(もうアイツじゃなくて、オレを見ろよ…)
End
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ルーシィは本当、優しいんです!
2014.01.29
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