キスじゃ死ねません




「お、」

「何?」






ただぼぅっとピンクに染る巨木を見上げていたら、あたしの隣に立つ彼氏…グレイがなんともいえない声を出したから、ふとそちらに視線をずらした。


すると、あたしの頭に突然影が出来た。






「……っ!?」






頭にある、微かに暖かいそれは、間違いなくグレイの手で。

思わず固まるあたし。






「とれた。髪の毛に花弁が……んだよ、過剰に反応すんなって」

「違っ、いきなりでびっくりしただけよ!……グレイは随分と女の子慣れしてるのね?」

「バカ言うな……オレだって緊張してたっつーの」






頬をかきながら言うグレイには、嘘言っているような素振りは全くない。

もちろん、そんなことは分かりきっているのだが。






「それもそうよね。付き合った彼女の手を握るのに、随分時間がかかってたし…」

「っ、悪かったな!」






顔を真っ赤にして抗議するグレイに、ついつい笑ってしまう。

だって、凄く可愛いから。

普段のグレイはもっと大人っぽい人だけれど、あたしと二人っきりになると、何故かヘタレを発動する。でも、それがグレイの素だと思うと、彼女としては嬉しいわけで…







「…だけど、」

「…だけど?」

「あたしは、そんなグレイが好き」

「っ!」

「グレイは?」






とても、愛しく感じる。

グレイの頬に手を滑らせると、どんどん熱が帯びてくる。自分がこんな顔をさせていると思うと、胸の奥がキュッと締まる。

あたしは、それを感じるのが凄く好き。






「……も、だ…」

「何?」

「オレもだよ!!」

「オレもって…何が?ちゃんと、グレイの口から全部聞きたい…」

「っ、お前…」





ふふ、と笑ってグレイを見つめる。

俯こうとするのを頬にあてた手で阻止して、下から覗き込む様に見るの。あたしだけを見てくれるように。


自分でも、性格悪いことをしてるのはわかってる。いつか突き放されるんじゃないかって。


でもやっぱり、グレイにはあたしだけを見てて欲しい。

いつも優位に立っているように見せてるだけで、本当はいっぱいいっぱいだってことを、グレイは知らない。


教えるつもりもないけれど…



だから、グレイの気持ちはいつでも知っておきたいし、グレイの口から直接聞きたいの。


何かを決意した様な顔をすると、グレイは頬にあるあたしの手をグイッと引っ張る。バランスを崩したあたしはすっぽりと、グレイの胸へとダイブしていた。






「オレも…ルーシィが、好きだ!」

「ふふ、よくできました。それじゃぁ、ご褒美に…







キスしてあげる」

「っやめろ!オレを殺す気か!?」







自分から抱き締めてきたくせに、思い切りあたしを引き離すと、グレイは、ドキドキし過ぎて心臓が止まる!と本気で訴えてきた。


あたしのほっぺがぷくっと膨らむのは、いた仕方ないことだと思うわ!






「もう、いつも言うけど…





キスじゃ死ねません」



(それに、キス以上のことをしたらどうなるの?あたしはグレイとシたいのに…)
(なっ!!!!)

End
ーーーーーーー

な・ん・だ・こ・れ\(^o^)/

草食系男子と肉食系女子…みたいな(笑)

俺様なグレイもいいけど、ヘタレなグレイも好き!(需要があるかは知らないが…)

そろそろ桜の季節ですね。

2014.03.25


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