先にいただいてます




※学パロ
※超絶天然ルーシィとヘタレグレイ


ロキSide





「付き合って3ヶ月なのに、キスすらして無いぃ?!」

「ちょっ、声が大きい!!」





叫びたくもなることを言った、グレイが悪い。

…まあ、実際叫んだわけだけど。


昼休みに、彼女になったルーシィでなく、僕を誘ってきたグレイ。
場所は中庭。そこそこ広く、プライベートが守られているような作りだ。とは言え、木々で区分されたような所なので、季節ごとに色んな虫が発生するために、人気は意外にも無かったりする。

だから、こんな人けの無い所で何考えてるのかと思ったら…まさかの相談ごとで。

ルーシィはルーシィで、約束があるらしく丁度いいとか何とか…

だからって、さぁ…





「そういう雰囲気になったりは?」

「なくは、ない…けどよ…」





モゴモゴ言うグレイに、イラッとした僕は悪く無いと思う。





「けどって何?好い加減自分からアタックしないと、ルーシィに捨てられるよ?誰かにとられても、文句言えないよ?」





僕の言ったことが余程ショックだったのか、地面に手をついて呆然としているグレイ。

何度声をかけても、反応ゼロ。
捨てられる…と壊れたラジオみたいに繰り返しつぶやくだけ。


こうなったグレイの復活方法を僕は残念ながら持ち合わせていない。なので、放置して立ち去ることに。


そもそも、本来なら、僕にグレイの話を聞く義理なんて無い。

だって僕は…





「付き合って3ヶ月なのに、キスすらして無いぃ?!」

「ちょっ、声が大きい!!」





なんとまあ、聞き覚えのある会話だ。


中庭を抜けようというところで聞こえてきた声に足を止める。

そっと覗いてみると、そこにいたのはクラスメイトのカナとレビィ。そして、先程の話の渦中にあったルーシィだ。


早くここを抜けたい…けど、教室へ行くにはここを通るしかない。

話の内容が内容だから、ここで切る訳にはいかない…だからといって、立ち聞きするのも…なんて悩んでいる間に、ルーシィ達の話はあらぬ方向へ飛んでいた。





「ルーシィはキスが下手だって、バレてんだよ」

「いやいや、それはないでしょ」





カナのブッとんだ発言に、冷静に突っ込みを入れるレビィ。

グレイがルーシィにキス出来ないのは、ただただグレイがヘタレだからだよ。だというのに…





「そっか…あたし、キスが下手なんだ…」

「ちょっと、ルーちゃん!」

「そう!だから頑張って練習して、ルーシィから攻めて行かないとな!」





それって、グレイからしてもらうのを諦めるってことだよね…


ベンチに手をついて呆然としているルーシィ。

何度声をかけられても、反応ゼロ。キスが下手…と壊れたラジオみたいに繰り返しつぶやくだけの彼女は、冒頭のグレイと全く同じに見えた。


心配そうに見るレビィを、引っ張って立ち去るカナは、さしずめ先程の僕そのものだ。


正直申し訳ないけれど、今のルーシィになら、気付かれる前にここから抜けられるかな。



なんて、最低なことを考えだ罰が当たった。

横を抜けようとした瞬間、ルーシィに腕を掴まれた。





「ル、ルーシィ…」

「……話、聞こえた、よね?」




疑問形で聞いてきてるけど、多分ルーシィの中では断定形なんだろう。




「大丈夫、誰かに話そうなんて、思ってな

「あたしと、キスの練習して!」




思ってない。と続くはずが、ルーシィのとんでもない発言に被されてしまった。





「……って、え?」

「…ダメ?」





ダメでしょう。普通に考えてダメだよね。

ここは説得しないと…





「ルーシィ…僕とキスしたいの?」





って、何口走ってるの僕は!!





「こんなことお願い出来るの、ロキだけかなって…」



僕だけ…

この言葉に特別性はない。

だって僕らは…





「……仕方ない幼馴染だなぁ」





フワッと明るく笑うルーシィに、辛くも嬉しくて。



というか、何で僕がここまで悩む必要がある?

むしろ怒っていいよね?


そう。だって僕は…



グレイがルーシィを好きになる前から、彼女のことが好きだったんだから。

今だって、好きだ。


それに、据え膳食わぬは男の恥って言うし…よし。





「……じゃあ、遠慮なく。いただき…」

「っざっけんなぁぁあああ!!!」




後ろからの怒号に振り向く。





「あ、グレイ」




ルーシィの指差す先には、息を切らしているグレイ。


何時の間にか自然復活していたようだ。




「あ、グレイ…じゃねーよ!」

「やあ、グレイ」

「やあ、グレイ…でもねーから!何勝手にルーシィにキスしようとしてんだ、ロキ!」

「……勝手に?」





プツッ


…と、僕の中で何かが切れる音がした。





「グレイがウジウジしてたし。何よりルーシィからのお願いだったからね



先にいただいてます」




そしてルーシィの腰に腕をまわして、グッと引き寄せる。

(っ、ダメに決まってんだろ!)
(でもほら、練習だって言うし)
(そうよグレイ!何事にも、練習って大切でしょ!)
(これは練習しちゃいけないやつだぁぁぁあああ!)

End
ーーーーーーー

思惑が外れて、ロキがただの不憫に……
グレイもヘタレからの不憫。

結果、不憫×2名の出来上がり。

2015.8.22

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