名前忘れた

 


※高校生設定








「じゃ、ちゃんと記入して、ここに出しとけよ」

「……はい」







また明日な、と出席簿をヒラヒラと振りながら去る担任のマカオ先生に軽く会釈すると、頭を下げた結果、手元の紙が目に飛び込んでくる。その瞬間、重々しい溜め息。






「ルーシィ、帰らねえのか?」

「これ書けたらね」

「何だ?レポートの再提出か?」

「それは有り得ないから」






自席でボーッとしているルーシィのそばに、帰り支度を終えたグレイが来た。

肩からエナメルが落ちないように掛け直しながら、ルーシィの手元の紙を見る。






「進路希望調査?まだ出してなかったのか?」

「うん…ねぇ、グレイは何て書いたの?」

「とりあえず附属大に進学って書いた。無難だろ?」

「確かに」

「…進学したいんじゃねーの?」

「したいけど……そう簡単に出来るとは思えないから」






ルーシィの言わんとすること…

それは、自身の家庭のことだろう。


グレイは舌打ちをすると、ルーシィの手から用紙をひったくった。






「めんどくせーな!ほら、貸せよ!」

「え、ちょ、ちょっと!」





何かを書いていくグレイ。

きっと、彼と同じ…附属大への進学を書いてくれてるんだ。

あたしには、書けなかった…書こうとしても、あの人の顔が目に浮かぶと、手が震えだして書くことが出来なかった、あたしの本当の希望を。






「一応言っておくけどな、ルーシィの進路はルーシィのもんだろ。例えあの親父さんだろうと、好きにしていいもんじゃねえよ」

「っ、グレイ…」

「ほら、帰んぞ」

「うん!」






そうよ。グレイの言うとおり…

これはあたしの人生。


ストーリーを書くのは、作者の仕事…。


作者名はあたしの物語…ちゃんと自分で綴らなくちゃ…よね!!




名前忘れた 

(おい、誰だ。ルーシィの進路希望調査に「オレの嫁」って書いたやつ)
(先生、オレです!)
(はあ?オレだし!)
(ざっけんな!先生、オレです!!)
(〜〜〜っ!!(グレイのバカ!))←恥ずかしくて何も言えない

End
ーーーーーーー
自分で綴らなくちゃ…と決めるも、グレイに綴られるという(笑)

2013.12.08

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