保護者ですから
奇跡が起きた。
高額な依頼であったにも関わらず、損害賠償といった支出がほぼなかったのだ。
となると、ルーシィは今月の家賃を払い、欲しかった本を買っても、まだ余裕がある計算に落ち着いたわけで…
「服を買いに行きたい?」
「うん!」
「エルザでも誘って行きゃいいんじゃねぇか?」
「……彼氏の好みに合わせたいのになぁ〜」
「待ってろ。すぐ支度する」
ルーシィが聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさで呟いた一言を、もちろんグレイは聞き取る。さっきまでの態度が一変したグレイに、ルーシィは呆れたような、嬉しいような気がして、少しむず痒くなった。
***
マグノリアきっての繁華街。
木目調の綺麗なカフェに二人はいた。アイスコーヒーを飲むグレイは何やらイライラしている模様だが。
そんな彼にオロオロしながらも、ルーシィはつとめて明るく声をかける。
「結構色んな服があって、目移りしちゃった!」
「ああ、そうだな。ルーシィに着せる服だからな……なかなか難しかった」
今までいろいろな店をまわっていた二人だが、なかなかお眼鏡に叶う服は見つけられなかった。あれでもない、これでもない…と何着も試着し、させられたルーシィは、さながら着せ替え人形ではあったが、自分の選ぶものよりも、グレイの選ぶ服を手にとると、不思議と疲れは微塵も感じなかった。
「似合う服、なかった?」
「あ?言ったろ。どれも似合ってるって。けどな、お前、露出が多すぎる服ばっか選んだろ?」
「そう?」
気付いた方もいるだろう。
グレイの苛立ちの原因は、ここである。
「無意識かもしんねーけど、普段から薄着過ぎんだ、お前は!」
彼の言いたいことは、ルーシィの普段着をよく知る面々が見ていたなら、理解してもらえるだろう。
しかし、自身を棚上げしたグレイの言い分に、ルーシィがムッとしたのは仕方のないことではないだろうか。
「なんか…保護者みたいね」
「はあ!?そこは彼氏だからだろ!?」
「えぇー、巷のお父さんみたいー」
「なっ、!?」
せめてもの反抗に、子供染みた発言。
でも、そんな彼女が彼に勝てるはずもなくて…
保護者ですから
(そうか。なら、オレの前だけならいいが……ナツたちにも見せるつもりでいんなら、『保護者として』躾てやる…)
(ええ!?)
End
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束縛グレイ?
2013.08.28
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