15文字以内で




※学パロ








勉学から解放される放課後だというのに、目の前に広がる教科書と問題集、見ているだけでげんなりするくらいに分厚い辞書の存在に溜息をつきそうになるのを、ルーシィは必死になって押さえ込んでいた。


そもそもの元凶であるナツは、椅子にだらしなく寄りかかりながら、口を尖らせている。






「だりーよもう。無理。ほんと無理」

「うだうだ言わない!ナツの為にやってるんだから!」

「この程度の問題も解けねーのかよ」

「んだと!?」

「事実でしょ、ナツ!それと、グレイはちょっかい出さない!」

「ぐぬぬっ…」

「へいへい…」







今取り組んでいるものは、国語の問題集だ。


一週間も前から発表されていた宿題だというのに、一ページたりとも手を付けてはいない…と言うよりも、宿題の存在そのものを忘れていたナツにルーシィがキレたのは言うまでもないだろう。


提出物だって成績付くのよ!?

ただでさえバカなんだから、こういうところで点稼ぎなさいよ、バカ!!!


そんなルーシィの叫びに、クラス全員が合掌していたとは、もちろんルーシィは知る由も無い。


提出日の前日に発覚したのを、不幸中の幸いと捉えても良いものか、悩ましいところである。







「はぁあ…エルザが居てくれたら、早く帰れるのに…」


 




私用があるらしく、この勉強会(?)には参加していない絶対的権力者の存在は、影響力大だと、ルーシィはひしひしと感じる。








「ナツ、真面目にやらないと、エルザにチクるからね?」

「っ、はいぃっ!!」






キッと睨まれたナツは、姿勢を正すと、鼻のしたに乗せていたシャーペンを握る。


すぐに問題集へ視線を落とすも、それはソロっとルーシィへ向けられた。






「でもよー、やっぱわかんねーもんはわかんねーよ…」






そう言ってナツは、一問に指を置くと、なぞりながら読み上げる。





「『主人公の気持ちを推測して、五十文字以内で説明せよ』って、どうすりゃいいんだ?」

「確かに、他人の気持ちを理解出来てりゃ、色々と苦労はねぇよな」

「グレイは邪魔しに来たの?…あたしは、他人の気持ちを理解しようとする力を養うのが、読解問題だと思うけど?」





ルーシィは赤ペンを一回転させると、トンっと問題を指した。





「いい?『何文字以内』って言われた時は、最低でもその八割くらいは埋めるの。この問題の場合は『四十文字以上、五十文字以下』ないしは『四十五文字以上五十文字以下』ってところね」

「八割…」

「こうゆう問題はぶっちゃけ慣れだよな」

「慣れで出来てりゃ苦労してねぇっつうの!!」

「全く…じゃあ、他人の気持ちを表現する前に、まずは自分の気持ちを表現してみたらどうかしら?」







グレイの横槍にいちいち噛み付くナツ。「んだと、コラ?」「やんのか、ああ?」とお互いのネクタイを引っつかみ頭同士をぶつけ合う二人。

ルーシィは左手を腰にあて、右手で額を抑える。やれやれと頭を振りつつも、自分なりの練習問題を出した。






「長えのは無理だかんな」

「……十五文字以内で、どう?」

「よし!」

「いや、短すぎんだろ!!」






ルーシィの出した制限文字数のあまりの少なさに、グレイは机を、叩いて突っ込む。

そんなんじゃ練習にならないだの、川柳より短いだの、ルーシィはナツに甘過ぎるだの…ルーシィに詰め寄るグレイだが、その間に割って入ったのは、桜色の頭とノートだった。






「オレの今の気持ちは…『超腹減ったから帰りたい!』十二文字!!」

「………本当にバカだな」

「んだと、コラ!そう言うグレイはどうなんだよ!」






得意気にデカデカと書かれた十二文字が踊るノートを掲げるナツを、バカだバカだとは思っていたが、本当にバカだなと鼻で笑うグレイ。

もちろんブチギレたナツはグレイに突っかかると、ノートの新しいページを開き、シャーペンと一緒に押し付ける。


眉間にシワを寄せて嫌がったグレイだが、視界の端にルーシィを捉えた瞬間、何かを思い付いたかのようにニヤリと笑った。

それがバッチリと見えたルーシィは嫌な予感がして堪らなくなる。


ナツからノートとシャーペンを取ると、サラサラと何かを書き込んでいく。






「ほらよ」

「何、あたしに?」





書き終わると、シャーペンはナツに。ノートは丁寧に向きを変えて、ルーシィに差し出す。



まさか、悪口でも書いたんじゃないでしょうね…



などと思い、訝しげに受け取ったルーシィは戸惑いながらもノートを見ると…





「っ!!」

「ん?どうした、ルーシィ…早くオレにも見せろって」





顔を赤くして固まった。


不思議に思ったナツだったが、ルーシィからノートを取ろうと手を延ばした瞬間、思い切り上に逸らされて、指が掠っただけだった。






「あ、ああ、あたし!購買部で何か買ってくるから、ナツ!ちゃんと問題集進めておきなさいよ!?」

「お、おう…」





ガタンと勢い良く椅子から立ち上がると、ルーシィは止める暇も与えずに、ノートを抱きしめたまま、教室から出て行った。





「何だ、あいつ?」

「ククッ…さぁな」








15文字以内で

愛の言葉を捧げる

(『世界で一番ルーシィを愛してる。』ってなによ、もぅっ!!)

End

2014.03.13


[ 22/36 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -