過去と邂逅する休み時間




毎日毎日学校へ行く



友達だっているし、勉強も嫌いじゃなかった






でも…









いつからか、全てのものから色が見えなくなった。










******





サビ付いた扉を押す。
誰もいない屋上。もちろん分かってて来た。今は2時間目と3時間目の間の休み時間だし…

フェンスに寄りかかり、空を見上げる。


先生に…グレイに会えなかっただけで揺れるあたしは、本当に弱い…


あたしはゆっくり目を閉じると、そのまま夢の世界へと誘われた。















『よぅ』


これは遡ること、数年前…あたしが中学生、グレイが高校生の頃の記憶……


あたしはお父様のすすめでこの学園にいた。

ここで頑張ることが、お父様の為であり、いつか、あたしの頑張りを認めて向き合ってくれる。そう信じていたけど…



気付いたとき、あたしは学校には行かなくなった。



最初は1時間だけサボってみたり。
みんなには、具合が悪かったから保健室にいたとか言って。
本当は、屋上にいたのに。

その頃の屋上でロキ先輩に出会った。



徐々にサボる時間が多くなり、いつしか行くことすらなくなっていた。



お父様は滅多に家には帰ってこない。

だから家にいても、大丈夫。でも、いつかはバレる。

そのときあなたは、あたしを罵るのかしら?
今までの頑張りは、一切評価しなかったくせに?



ある意味ボロボロなあたしのもとに、突然現れた彼…それがグレイ。

近所に住む年上の男の子。グレイについての認識は、そんな感じだった。どうしてかはよくわからないけど、あたしが不登校なのを知ってか知らずか、あたしの家にちょくちょく来ては、おしゃべりしたり、勉強を教えてくれたりした。



この日はいつも通りとはいかなかった。
グレイはテスト期間にも関わらず家に来てあたしに勉強を教えてくれた。でも……



『なぁ…学校に行きたいとか、思わないのか?』

『…え?』




学校については何も言わない。
それが暗黙の了解だったのに…




『…どうして?』

『だってよ、毎日家にいるのって結構暇じゃねぇか?』

『学校の方が退屈よ』




そんなの、行ってみなきゃわからないのに…

この時のあたしは、そう決めつけてた。




『グレイみたいなカッコイイ先生がいたら、あたしも退屈じゃなくなるし、毎日学校に行きたくなるのにな』




おどけて言ってみたけど、結構本気。
グレイといるのは楽しいし、勉強もわかりやすい。それに…グレイの笑顔が見れるなら、勉強も…学校に行ってもいいんじゃないかとさえ思えてしまえる。




『不純だな』

『学校に行く理由としては十分だと思うけど』





退屈なことは嫌い。グレイさえいれば、何だってできる。
その為に、側にいて欲しいと思うのは、あたしの身勝手なエゴだけど…




『オレが先生なら、学校に行くんだな』

『えっ…』

『そうすれば、退屈じゃなくなるんだろ?』




突然の申し出に驚いたけど、もし、本当にいてくれたら嬉しい。思わず笑ったあたしに、一瞬キョトンとしたグレイだったけど、パッと顔を明るくすると、あたしの頭を撫でてきた。

この時の笑顔は反則だと、今でも思っている…










「ん…」



ああ、懐かしい夢。
いつから、あたしはこんなにもグレイのことが…


ふと自分に影ができた。不思議に思って、とじていた目を開くと…




「やぁ、お目覚めかい、お姫様?」

「……ハイ、ロキ先輩…」

「それはよかった♪」

「…今、何時ですか?」

「昼休みだよ♪」




いくらなんでも寝過ぎでしょ、あたし…





「目覚めのキスでもした方がよかったかい?」

「間に合ってます。大丈夫です」




そんなことされたら、あたしの命はない!

何を隠そう、この人はこれでも学園の有名人。しかもファンクラブまで存在するときた。

キスなんてされた日には、学園のほとんど(基本女子)を敵にまわしたのと同じ!




「それに、キスは好きな人としなくちゃ。軽い気持ちで言ってると、いざって時に信用されませんよ、ロキ先輩?」

「……それもそうだね。覚えておくよ」

「じゃ、先輩。起こしてくれて、ありがとうございました」




ロキ先輩のキスという言葉に、ここにはいないあの人を思い浮かべる。


好きな人……


ただでさえ不純だとまで言われたのに、どこまであたしは愚かなんだろう。

一瞬だけだとはいっても、グレイとキスするところを想像するなんて…


なんだかいたたまれなくなってロキ先輩に御礼を言うと、あたしはそそくさと屋上から出ていった。

すごく動揺してた…



「ルーシィも結構きついこと言ってくれるな…」



そんなロキ先輩のつぶやきにも気づかないくらいに。





過去と邂逅する休み時間
キミとともにいた時間が愛おしくて



END

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